地域DX推進ラボ DX認定取得事例~有限会社瀬川食品

DX認定をきっかけに意識改革――有限会社瀬川食品
有限会社瀬川食品
代表取締役 澤野 恵一 氏

有限会社瀬川食品は、北海道厚岸町の昆布を中心とした水産品加工会社です。主力製品は厚岸産昆布を用いた昆布巻や佃煮。昆布は一度も冷凍せず、昔ながらの手作りにこだわっています。従業員は40代~70代の7名。女性が多く活躍しています。



原料となる昆布やカキ、アサリなどの水産物は入荷量にバラつきがあり、安定していません。そのため、毎日製品を作ることに集中しており、会社のビジョンを定めて経営していくということができていませんでした。澤野社長はこれまで一般企業で営業などの職についていましたが、妻の家業である瀬川食品の経営に携わるようになって13年。次のステップへと踏み出す上で、交流のあった釧路市DX推進ラボからの紹介によってDX認定を知りました。
以前から自社サイトで通販などは行っていましたが、従業員も少なく十分に活用できていませんでした。在庫・原価・販売データも紙やExcelで管理していたためデータを活用できておらず、伝票処理も二度手間であるなど、業務の改善が急務でした。さらに新商品開発や販路拡大を進めていくために、専門家のアドバイスを受けながらDX認定取得を目指すことを決めたのです。
売上比率は7~8割が卸向けですが、「できるだけ個人のお客様にも届けたい」と澤野社長は考えています。これまでは自社サイト上で通販を行っていましたが、大手ECサイトでの販売に切り替えました。これによって支払い方法が増え、お客様にとってより使いやすくなりました。より多くの人に届けるためには、自分たちのことを知ってもらうことが大切。自社サイトもこれまでは製品の情報しか載せていませんでしたが、地域のことにクローズアップしながら、より多くの情報を得られるよう、動画などを含めて内容を充実させています。通販サイトやふるさと納税の商品ページには、澤野社長の写真が大きく使われています。製品にはイラスト化したステッカーを添付。地元の大手スーパーマーケットの売り場にも大きく掲示され、ブランディング化を進めています。「最初は自分を出したいとは思ってはいませんでした。ですが、買っていただける方に親近感や安心感が必要かなと思い、社を代表して出ています」と澤野社長は語ります。


水産品は入荷量が安定していないということもあり、シイタケやフキなど、北海道の山の素材を使ったコラボ製品の開発にも取り組んでいます。これまで佃煮の製品数は4種ほどでしたが、現在は8種。他企業とコラボレーションすることで、販路も拡大しています。水産品についてはこれまでは1社から購入していましたが、リスク分散のため数社から仕入れに変更。冷凍品は解凍の際にドリップが出て味が落ちてしまうため、昆布は一度も冷凍せず、中に包む材料の再冷凍も行いません。お客様にとって安全安心でおいしいものをというテーマは変わらず、製品はできるだけ出荷の前日に製造するフレッシュマネジメントを行っています。添加物・化学調味料も減らし、昆布のうまみなど素材を最大限に生かした製品づくりを目指しています。
毎日製造するものが変わるため生産計画は難しいですが、手作りのこだわりは維持しつつ、より作業員の負担を減らせるように作業工程の見直しと自動化の検討を進めています。
会社のビジョンを定め、その中から何をデジタル化していくかを学ぶことのきっかけがDX認定でした。「会社を経営するっていうことに関して、教科書はありません。誰でもなろうと思えば社長にはなれますが、勉強をしないとやはり取り残されてしまいます。世の中の流れも速くなっているので本当に勉強は必要。DX認定を取ることで、意識の変化があったこと、勉強の必要性を実感できたことが大きいです」と澤野社長は語ります。伝票のデジタル化によってこれまで二重で処理していた伝票管理が効率化し、経理の手間が減ったことで、社内からも好評を得ています。
ECサイトのレビューは5点満点のうち、現在瀬川食品は4.7ととても評価が高く、さらに選ばれやすさが向上しています。製品の質の高さだけでなく、安心してもらえる情報提供が功を奏しています。
北海道漁業協同組合連合会の昆布普及事業に参加し、幼稚園や小学校の給食にも瀬川食品の佃煮が採用されています。残食率は非常に低く、子どもたちにも大人気で、「この佃煮はどこで手に入るのか」という問い合わせも寄せられ、自信にもつながっています。子どもたちが安心して食べられる地元の商品として、少しずつ知名度が上がっていることを実感しているといいます。
DX認定を取得しましたが、現在は課題の洗い出しと方向性の策定、優先順位付けができている段階で、今後はより具体的な計画推進のフェーズに移行します。現在進めているのは、佃煮の自動充てん機の導入です。現在は全て手作業で行っている充てん作業ですが、計量・充てんなど手間と時間がかかる工程を自動化することで、より作業員の負荷を減らしていきたい考えです。
地元の北海道厚岸翔洋高等学校とコラボレーションし、新製品の共同開発を行っていくことも計画しています。こうした新しい取り組みにチャレンジするようになったことも、DX認定を取得したことによる意識改革の恩恵だと澤野社長。今後はSNSを活用し、さらに若い人たちや北海道以外の人たちへも瀬川食品の商品を届けていくことを計画しています。受注サイトによる受注拡大だけでなく、他のSNSでも受注を受けられるよう体制の構築を進めているところです。
さらにDX認定取得をきっかけに、ヨーロッパなどの海外へ展開していくつながりが広がっています。現時点ではまだ計画段階ですが、今後は海外展開も含め、販路拡大を目指していきたい考えです。
昆布は、2~3年経ったものの方が味の馴染みが良くなります。こうした知見は、昆布加工業者だからこそ得られるもの。地域社会の中でさらに役割を果たし、地元を盛り上げていく。伝統的な昆布産業を未来へと引き継いでいきたいと澤野社長は考えています。


釧路市DX推進ラボの伴走支援のもと、経済産業省/IPAの「ふるさとCo-LEAD」プログラムを活用しました。デジタル専門家のサポートもあり、「ITCA表彰2025」DX認定支援賞を受賞。地域の新聞にも報道され、周囲からの反響も大きく、今後はDX認定についてもPRしていきたいと澤野社長は語ります。
釧路市DX推進ラボの代表である中島秀幸氏は、伴走支援は継続していく仕組みが重要であると指摘します。DX認定後の計画の実装費用については、自社資金または補助金等の組み合わせを検討し、これからも経営者に寄り添って支援していく体制を作っていきたい考えです。
有限会社瀬川食品
〒088-1151 北海道厚岸郡厚岸町真栄1丁目13番地
TEL:0153-52-2836
FAX:0153-52-4029
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