地域DX推進ラボ DX認定取得事例~株式会社福井

DXで売上100億、そして次の100年を目指す
株式会社福井
代表取締役 福井 基成 氏

株式会社福井は、刃物のまちである大阪府堺市で、明治45年から刃物を中心とした金物を取り扱う老舗卸売企業です。現在は刃物に止まらず、農園芸用品・工具・DIY用品・アウトドア用品など、数十万点にのぼる商品を取り扱っており、同じく金属製品の産地である兵庫県三木市と新潟県三条市に拠点と物流センターを持っています。法人向け販売が主ですが、10年ほど前からはECサイトでBtoC事業にも進出しています。さらに創業100周年を超えた2018年からは包丁の製造にも挑戦。日本製の高品質な包丁を世界中へ届けています。現在も成長を続けている100年企業です。


株式会社福井では、2016年に物流基幹システムを導入。当初から各拠点においても同様のプラットフォームを利用し、拡張させていく計画で進めていました。しかし、導入当時に比べ売上規模は倍以上に増えており、取り扱い品目も増加。法人向けではなく一般消費者向けのECによる小売りなど、業務の幅がどんどん広がっていくのに対し、要件定義が不十分なまま、「その場しのぎ」の改修を重ねてきました。カスタマイズのバージョンアップは200回を超え、まさに継ぎ接ぎ状態。システム課の中野氏はこう話します。「導入当時はそれなりの整合性を持っていましたが、時を経るごとに不整合が起こってきたというのが、ここ数年の大きな課題です」。
二重登録などの重複作業も多数。作ったものの全く活用されていない機能や、周知不足のために本来の想定と異なった方法で使われている機能もあります。データ処理にも時間がかかり、改修時のバグも頻発。運用だけでなく保守の部分も難しくなっており、「取っ散らかった状態になってしまっている」と中野氏。自社仕様にどんどんカスタマイズを行った結果、パッケージソフトでは対応できるものがなく、コスト面でも、現行システムの整理を行わないことには、システムの移行すらできないという状況でした。
従業員から寄せられる個別の要望に対し柔軟に対応してきましたが、改修履歴を見ると、変更して、元に戻して、また変更するという行ったり来たりを何回も繰り返していたことも。会社としてしっかりとした軸を持たず、場当たり的な改修を行っていたことが、こうした状態を招いてしまっていたのです。
2022年、社内に初めてシステム課を新設するに伴い、外部からの協力を仰ぐことにしました。大阪府副業・兼業人材活用促進補助金を活用し、人材バンクからITに強いコンサルティング会社に伴走支援してもらいながら、システム要件の整備、どういう部署でどういうシステムを使っているのか、その部分でどういう課題があるかという洗い出しを行いました。こうした助走期間が整いつつあったタイミングで、堺DX推進ラボからDX認定取得に向けた伴走支援の話を受けたと言います。
「社内にリソースがないぶん、外部の詳しい方から話を聞けるのは非常にありがたいと思っていました。DX認定を取ろうということが目的というよりは、詳しい方の知見を頂けるということに対して、我々は非常に興味があった」と福井社長は話します。「まな板の上の鯉の気持ちで、粗を探して突いてもらいたい」という素直な気持ちで取り組んだプログラムは、非常に学びの多いものとなりました。
現状把握から課題を洗い出し、あるべき姿を定義づける。そしてどういう順序で進めていくべきかというアドバイスがあったことで、現場でも大きな混乱なくシステムの改修が進められたと言います。
会社の目標設定として、売り上げを現状の50億円から100億円を目指すという100億宣言を行いました。「現状50億円の会社が、100億円に向かっていく。且つ、現行のシステムは導入当時20億円程度で設計されたもの。当然、このまま走り続けてはどこかでエラーが出るのは間違いない。卸売の会社なので、仕入先さんや得意先のお客さんと一緒に成長しなければ、これ以上会社としての成長も目指せない。DX認定を契機として、目標の定義や、その具体的な施策の策定をしました」と福井社長。DXを通して会社全体の成長に繋げたいという軸が定まったのです。
顧客も取引先もみんなが便利になるシステムを目指す
あるべき姿に対し、DX化の現在の進捗状況は2~3割程度と自己評価していますが、「やるべき、やらないべきというのが、判断しやすくなりました」と中野氏は語ります。現場から上がってくるさまざまな要望をそのまま場当たり的に対応するのではなく、あるべき目標に向けてシステムを構築していくという軸が定まったことで、迷いがなくなったと言います。
社内向けだけでなく、社外に対しても徐々にIT化を進めています。得意先はすでに7割ほどがEDI化を達成。自社システムにどう取り入れるかを個別検討することで、大きな問題なく移行が進んでいます。一方、仕入先には事業規模の小さい会社も多くあり、これまでFAXや紙の注文用紙などさまざまな発注方法が混在していました。「相手にとっても便利なサービスになるようにしなきゃいけないという思想を基本設計に組み込んでいます」と福井社長。自社都合だけでなく、相手にとっても便利なシステムを作り上げていくことで、両社にとって楽になるよう進めた結果、現在は受注件数に対し、6割以上がEDI化を達成。EDI化が進んだことで、実際に現場からも「やりやすくなった、大分楽になった」という声が聞こえてきます。卸売企業だからこそ、取引先も、得意先もみんなが楽になるようなシステム作りがキーとなっているのです。
現在も過去の実績に基づいた需要予測を行っていますが、DX化による需要予測を行い、適正在庫の管理をさらに進化させていきたい考えです。また現在では売上増に応じて人員が増えているため、人員を増やさずに売上を上げていくことを目標としています。
金物は在庫の陳腐化リスクが低いため、長期在庫製品が多く、在庫はどんどん増えていく傾向にあります。また取り扱い品目が増えるに従い、倉庫に在庫を置ききることが難しくなっているため引当率が下がってしまうことが課題となっています。引当率の低下は顧客不満足、販売機会損失の原因。倉庫の格納効率を上げるためには、自動倉庫の導入が必須です。今後は自動倉庫も視野に、DX化によってより包括的に在庫管理の効率を向上させていきたいと福井社長は計画しています。
また、製造分野でもDX化を進めていきたい考えです。現在は卸向けの従来のシステムを利用して製造管理を行っているため、職人が次に作るべき製品の把握が困難という課題があります。アナログ作業も多く、製造工程を見直して自動化すべき部分は自動化していくことで生産効率を上げることを目標としています。ハンドルと刃をカスタムできることから、取り扱い点数が非常に多くなっており、バックオーダーも多く抱えています。課題は山積みですが、「伸び代しかない」状況。DX化によってさらに改善を進めていく予定です。
福井社長は語ります。「今はまだDXとかIT化が業務改善にしかベクトルが向いていない。付加価値を高めていくとか、お客さんが便利だなとか、前より早くなったとか効果を実感してもらえるようなDXをしていきたい」。


経済産業省/IPAの「ふるさとCo-LEAD」のプログラムを活用したことで、「DXとはなにか?」という段階から学ぶことができ、システム改善だけでなく長期的な目線で戦略を考えられたことが非常に良かったと福井社長。また、自分たちだけでは知り得なかったツールを教えてもらえたことも助けになったようです。
DX化を進めるにあたり、自社内での反発や混乱が生じなかったことは、株式会社福井が常に内部環境を変化させている会社だからこそ。創業100年を超える老舗企業でありながら、変化を恐れず、常に新しいものに挑戦し続ける。毎日をより良いものに変えていくという社風が、DXによって同社をさらに先へ、前へ推し進めていくのです。
株式会社福井 システム課
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