地域DX推進ラボ DX認定取得事例~株式会社スガイ

デジタルを通じて生まれた新たな絆で新規事業創出を目指す ― 株式会社スガイ
株式会社スガイ
代表取締役 菅井 哲也 氏

株式会社スガイは、1950年創業。山形県村山市にある金属加工会社です。切断・旋盤・マシニング・研削までの一貫加工を行っており、特に長尺や複雑な形状の主軸加工を得意とし、農業機器や自動車製造工場設備、紙幣印刷機など幅広い製品を手掛けています。
社員は現在12名で、20代~40代の比較的若い世代が中心となっています。
職人の代替わりに合わせてデジタルでイノベーションを
株式会社スガイでは、1個から200個程度までと少ロット多品種の製品を取り扱っているため、毎日何度も段取りを変えながら、さまざまな種類、いろいろなメーカーの製品を加工しています。取り扱う製品の種類が多い中、在庫管理は現物と現品票、紙のメモに頼った状態でした。
そのため、リアルタイムで在庫情報を把握することが難しく、発注ミスや管理ロスを完全に防ぐことができないことが課題となっていました。
情報の属人化が最も根深い課題の一つに挙げられています。菅井社長は当時の課題についてこう語ります。「顧客情報や交渉経緯、加工ノウハウ、過去の図面の活用実績などが、担当者個人の記憶やメールの中に点在していました」。高齢の熟練職人も多く、世代交代が迫っていました。体系化されていない情報は教えにくく共有も難しいため、情報を持つ職人が引退してしまうと、技術だけでなく業務に必要なあらゆる情報が継承されないことが懸念されていたのです。図面情報も、会社ごとに紙図面をファイリング管理していました。
2023年ごろからDXによって社内の課題を解決すべく、IT導入補助金を活用して既成のパッケージソフトウェアの導入を検討しました。当初は「ソフトを入れればDX化だと思っていた」という菅井社長。しかし、非常に高額だったことから、「当社の事業規模で、そこまで高額なソフトが本当に必要なのか」と疑問を抱いたといいます。そこで山形大学工学部荒川サテライトに相談。自社に本当に必要な機能は何かという要件を整理し、最終的には村山市のDX補助金を活用して、当初検討していたソフトウェアの約100分の1という低コストで必要要件を満たすシステムの構築に成功しました。
このことが、他社任せではなく、自分たちでできることをミニマムに自分たちで作り上げる、デジタル内製化の契機となりました。
2024年にはDX認定を知り、独自に申請したものの取得することはできませんでした。そこで「ふるさとCo-Lead」プログラムに参加。2025年9月、2回目の申請でDX認定を取得しています。
自社開発ソフトは無料配布でコミュニケーションの手段に
まず着手したのは、「デジタルを使って、どのように顧客に貢献していくか」というビジョンの明確化です。その上で、プロセスとプロダクトという2つの軸でデジタル化を進めていきました。
課題であった在庫管理については、プロセスイノベーションにあたります。電子化するにあたり、当初はQRコードを利用したものを構想していましたが、事業規模を踏まえよりミニマムに、バーコード管理を試験的に行っています。図面と品物にバーコードを貼り、個数を入力するというシンプルな手順で行えるよう自社でシステムを開発しています。
社内ネットワークはセキュリティにも配慮し、ローカルネットワークを導入。社内NASを利用して図面などの情報共有を行っています。「当社はたくさん営業社員がいるわけではないので、現在では社内だけの環境の方が良いのではないかと考えています」と菅井社長。大がかりなシステムやクラウドを使うことなく、社内の営業体制や規模を見定めて自分たちに必要な機能だけを選び取っているのです。
プロダクトの面からは、図面管理をデジタル化することで、ナレッジの標準化とノウハウの共有化を図っています。紙管理であった図面をPDFでデータ管理していくことと並行して、図面に加工条件や使用したプログラム、工具などの情報を書き込む運用へと手順を変更しました。これによって、担当した職人が不在の場合や機械が変わった場合でも、同じ条件で加工できるようになりました。
社内のデジタル人材育成にも取り組んでいます。生成AIを利用して、ソフトウェアの内製化にも挑戦。まずはゲームを作ることでプロンプト作成のコツを掴むところから始まり、徐々に自分たちの困りごとを自分たちで開発したソフトウェアで解決できるように進めています。作成したプログラムは自社Webページ内の「デジタル技術の広場」にて公開し、無料で利用できるようにしています。

熟練職人から若手職人に代替わりの時期と重なったということもあり、新しいやり方への移行には約2年の時間がかかりました。
「若い人たちが特に頑張ってくれたと思います。生産頻度の少ない製品などは、その都度熟練した職人に確認しながら進めました」と菅井社長。難しい加工は工程を動画で撮影し、社内限定で公開している動画サイトに投稿して、従業員がいつでも確認できるようにしています。

デジタル技術の広場は、同じ市内の事業者に使ってもらい、フィードバックをもらってブラッシュアップの機会ともなっています。「自分の会社のことだけを考えるのではなく、いろいろな人の話を聞く機会にしたい。情報共有することで、それぞれの課題が解決できるかもしれない」と菅井社長。自作プログラムがコミュニケーションのための話題づくりのきっかけになっています。デジタルを通した新しい繋がりが生まれ、地域産業全体のデジタル変革に大きな役割を果たしているのです。
従業員のデジタルスキルの向上を目指しています。現在はスマートフォンを利用して自社の動画サイトにアップロードしていますが、最終的には動画のQRコードを図面に付与し、図面情報をさらに充実させていきたいと考えています。
またこうした動画は、従業員の教育にもすでに活用されています。新人社員が隙間時間に動画を確認できることで教育時間の短縮につながり、より要点を絞った指導が可能になりました。「教える側、教えられる側のコミュニケーションのやり方がだいぶ変わってきた」と菅井社長。デジタルを通じて、業務のやり方だけでなく社員の意識の変化を実感しています。今後は生成AIの活用をさらに進め、加工条件の生成や図面からのプログラム作成などにも取り組んでいきたいと考えています。
社内だけではなく、顧客とその先のエンドユーザーの潜在ニーズを捉え、新しい事業を起こすことを構想しています。現在は機械部品を製造していますが、顧客である機械メーカーだけではなく、例えば農業機械であれば使用者の農家の人たちが何を求めているかまで踏み込んでいく。さらにソフトウェアのダウンロードを契機に同じ村山市内に協力企業同士の横のつながりを作っていくことで、1社ではできなかった新しい仕事を受注していけるような体制を作っていきたいと菅井社長は考えています。デジタルを通じて生まれた新しい仲間とともに、全く新しい仕事を受注する。それはロボットを使うといったこととはまた違う形での、トランスフォーメーションの1つである――株式会社スガイは、2年後、3年後に向けてすでに動き始めています。
菅井社長は「トランスフォーメーションする意味が自分の中では当初分かってなかった」と語ります。自社課題を解決するためにDX化に取り組んだものの、当初はその先のビジョンまでは明確化されていませんでした。「ふるさとCo-Lead」プログラムに参加し、取組の中で経験した苦労や学びとして、DX認定は目的ではなく、会社として進む方向を示す決意表明であるという考えに至りました。
「DX認定は昨年取得しましたが、あくまでデジタル化は手段でありツールであると捉えています」と菅井社長は語り、自ら率先して生成AIを使い、デジタルで数値化して改善を行っています。「こういうやり方があったんだ」という新しい気付きが生まれ、業務改善に対する発想が変わったことを実感しています。
株式会社スガイ
〒995-0032 山形県村山市楯岡荒町1丁目11番1号
TEL:0237-53-2518
FAX:0237-55-2653
URL:https://www.kk-sugai.com
