地域DX推進ラボ取組事例2025 ~ 恩納村DX推進ラボ

~ 観光客も、働く人も、高齢者にも便利な移動手段を ~ 恩納村DX推進ラボ
恩納村DX推進ラボ
会長 山田 真久氏

沖縄本島西海岸中央部に位置する恩納村は、海岸沿いに大型リゾートホテルが17軒集中しており、現在も新しいリゾートホテルが次々と建設されています。世界中から注目を集めている国内屈指のリゾート地であり、これほどのリゾートホテルが集中する場所は沖縄県内でも珍しく、特別な村なのです。一方で、観光業はDX化が遅れ、人材不足が課題となっています。恩納村DX推進ラボは、株式会社OTSサービス経営研究所が中心となって、観光業とIT企業がそれぞれ参画した任意団体です。恩納村を国内外の観光客に選ばれる、付加価値の高い観光地になることを目指しています。
沖縄県内には鉄道がなく、車による移動が主な交通手段となっています。一方で恩納村の村内にはスーパーマーケットがなく、日常的な買い物のために隣接する他の自治体へ行かなくてはなりません。恩納村では過疎化と高齢化が進み、交通手段を持たない高齢者などに対し自治会が運営する乗り合い自動車で買い物支援を行っていますが、現状の体制では月に2回程度の利用と需要を満たせていません。福祉で運営されている通院のためのバスは買い物に利用できないなど、現在の縦割り体制では不便も多い状況です。村内に高等学校がないため、高校生の通学も親による自家用車の送迎が必要となっています。
また、リゾートホテルには多くの外国人労働者が働いています。日本の運転免許や自動車を持たない人も多く、またホテルは365日24時間稼働のためシフト制で時間の都合がつけにくいということもあり、ホテルに勤務する人たちの日常的な買い物需要を満たせていないという課題があります。
恩納村内のホテルに宿泊する客は平均して1.8泊と短期滞在が主流です。ホテル間が離れており、ホテルから別の飲食店への移動も徒歩では難しい距離にあるため、ホテルを利用する客がホテルの中だけに留まってしまい、村内全体の経済効果が限定的であるということも課題として挙げられています。ホテル側としても移動の送迎が負担となっています。より長期滞在してもらい、村内での経済効果をもたらすためにも、観光客の利便性向上が求められています。
路線バスは少なく1時間に1本程度。タクシーも夜の6時以降ではほとんど走っていないという状況です。高速道路を用いた那覇市や那覇空港からの高速バスは整備されているものの、「ラストワンマイルの交通手段を作ることが、恩納村の交通事業において一番重要なポイント」と山田氏は語ります。
恩納村DX推進ラボは、これまでに様々な実証事業を支援して来ました。令和4年度にOTSサービス経営研究所が経済産業省「無人自動運転等のCASE対応に向けた実証・支援事業(地域新MaaS創出推進事業)」にて実施した村内巡回バスの実証事業を皮切りに、令和6年度にNTTコミュニケーションズ(現NTTドコモビジネス)が、内閣府「新たな沖縄観光サービス創出支援事業」で構築した「オンデマンド運行システム」による乗合運送を実証しました。この際、JR西日本が開発したアプリケーションWESTERを導入。村内のホテルや観光地、近隣のスーパーマーケットなど20か所程度をバス停に設定し、令和6年度の実証時にはタクシー会社と連携した村内オンデマンド交通システムを構築しました。
更なる発展形として、令和7年度事業では一般ドライバーによるシェアライドによって運行する「公共ライドシェア」を導入しました。村内のマリンスポーツショップで働く人や、伝統芸能など芸能活動に従事し定職を持たない人が一般ドライバーとして参加しました。安全性確保のため、地元のタクシー会社と連携してドライバーの安全講習を実施しています。車両は恩納村観光協会の敷地内にて待機し、観光協会が鍵を管理。稼働のたびに観光協会から貸し出す形式を採用しました。ドライバーは乗車の前にはアルコールチェックを必ず行い、またそれを第三者が確認するといったルール作りも行っています。ドライバーの稼働・マッチングシステムについては、恩納村DX推進ラボの会員である県内の事業者がアプリを開発し、活用しています。

令和7年度の実証運行では、約2ヶ月で延べ371名の利用者があり、非常に高い稼働率を達成しました。アンケート結果からは、利用者の50%以上はホテルの従業員、約22%はホテルに滞在している旅行者、住民は約17%という結果でした。シェアライドを実施したことで、タクシーと競合せず未充足需要の掘り起こしに成功しています。利用したホテル従業員へのアンケートでは、約55.6%の利用者が30分以上1時間以内の休憩時間のセーブに繋がったという結果も出ており、従業員の待遇改善につながっています。
また、高齢者の買い物のために孫が予約をし、利用したという事例もありました。自治会と協力しつつ、今後はさらに高齢者が使いやすいようなやり方も模索していきたい考えです。
令和10年頃より宿泊税の導入が予定されており、新聞報道によると、恩納村は年間5億円の税収が見込まれています。地域への還元という点からも、宿泊税を村内オンデマンド交通の車両購入や運営費に充てることなどを検討しています。
現在利用しているWESTERは大手ベンダーが開発したアプリケーションのため、恩納村では過剰機能である点は否めません。また恩納村DX推進ラボで開発したアプリケーションとのAPI連携が難しく、どうやってプラットフォームを作り、データを統合していくかが課題です。現在、利用料金は現金徴収していますが、今後はどのような決済方法を取るかも含めて、更なる検討が必要です。「パッケージで持ってくるのではなく、今後はよりミニマムなソフトウェアをどのように運用するのか。生成AIを活用したシステム開発ということも視野に入れ、我々としては取り組みたいと思っているところ」と山田氏。
利用者のデータが集まれば、AIを利用しどの場所や時間帯の稼働率・利用率が高くなるかという需要予測、車両配置最適化が可能となります。今後はデータを活用してどのような施策を取っていけるかチャレンジしていくことが大事だと山田氏は語ります。業務として効率的な方法を模索し、持続性のある事業としてどのような運営をしていくかが課題です。今回登録した一般ドライバーも、事業化されたときには継続して運転手をしたいという声が多かったため、人材の活用という点でもメリットを感じています。
令和6年道路運送法に基づき、交通空白を解消するための「自家用車活用事業」(日本型ライドシェア)の限定的な解禁が行われました。これによって、村または公共施設、公共団体が運営することで、一般ドライバーが時間や期間を区切ってライドシェアの運用が可能になりました。
本来であれば一般ドライバーの自家用車を用いることが理想ですが、事故対応などのリスクを踏まえ、恩納村DX推進ラボではレンタカーを活用しました。これにかかる経費については、令和7年度内閣府「新たな沖縄観光サービス創出支援事業」補助金を活用しています。令和8年度には自走化に必要となる運営システムのプラットフォームを構築する必要があります。自走化の条件となる宿泊税の導入は令和10年を予定していますが、今後は内閣府沖縄総合事務局運輸部、さらに県とも連携を取りつつ、地域交通をどうしていくのかを具体化していく必要があります。
鉄軌道の無い沖縄では、これまで那覇市を出発点とした路線バスが各地域に広がっていくという交通網ができていました。しかしこれからは、交通弱者となっている高齢者の方や、交通空白といった問題を解消していくためにより細やかなサービスに移っていくことが求められています。恩納村DXラボとしては、観光協会を中心とした地域交通を想定しています。山田氏はこう語ります。「恩納村では自治体が最初から予算化してという取り組みは難しかったため、使えるもの、いいものを集めて使っていこうと考え、最初から必要なものは何かという「現場の課題」を分析し、課題解決に必須なシステム導入からアジャイルで進めていきました。宿泊税を契機としてシステムをきちっと入れて、自走化できるように地域を支援していきたい。この恩納村がモデルとなって1つの事業の形を作りたいですね。」
山田 真久
株式会社OTSサービス経営研究所
代表取締役社長・CEO
NPO法人 沖縄時空間情報活用推進協議会 理事長
経済産業省選定「恩納村DX推進ラボ」会長
〒901-0155 沖縄県那覇市金城1丁目12-17 (2階)
TEL::098-869-1717(直通)
MAIL:myamada@otsinfo.co.jp
