地域DX推進ラボ取組事例2025 ~ 津山市DX推進ラボ

津山市産業経済部次長兼みらい産業課長
つやま産業支援センター事務局長
沼 泰弘氏

つやま産業支援センターは、平成27年に津山市が設置した外郭団体で、津山市の産業の活性化、魅力ある雇用の創出に取り組んでいます。
2020年にIoT推進ラボの認定を受けたのち、2023年にDX推進ラボとしても認定されました。地域企業のデジタル化ニーズを調査し、デジタル化の支援を行っています。また、地域企業で働く人や就業希望者をデジタル人材に育成し、地域で活躍してもらうという流れを作る活動をしています。沼氏は「デジタル関連産業の活性化が津山市の成長の鍵。IT投資を地産地消の形でやろうと進めています」と話します。
津山市における情報通信業の事業者数は、全国平均と比べても非常に少なくなっています。産業別純移輸出額を見ると、流出している産業のトップは情報通信業。およそ238億円が実際に市から域外に流出しています。産業別修正特化係数においても、情報通信業は全国平均より低い0.17という結果となっています。
一方で、情報通信業は平均所得が高く、若い世代が好む傾向にあります。つまり市内では情報通信業の雇用機会が乏しく、若者の流出につながっている懸念があるのです。
2022年から毎年、地域企業に向けて津山信用金庫とデジタル化のニーズ調査を実施。最初の調査では360件ほどの回答のうち、デジタル化が進んでいないと回答したのは67%にも及び、うち、54%はデジタル化を進めたいという結果でした。しかし、何から進めていけば良いのかわからないという事業者が多いため、つやま産業支援センターと津山市雇用創造協議会にICTコーディネーターを配置。現在は3名のコーディネーターを、それぞれの企業へ訪問、加えて専門家登録のある外部ICT専門家を必要に応じて派遣し、デジタル化の伴走支援を行っています。
また、2019年には津山市内に事業所を置くITベンダーの連携プラットフォーム「つやまICTコネクト」を立ち上げました。立ち上げ当初は12社でしたが、現在は16社まで増加しています。
上記の体制により、特に市内の企業でIT導入したい事業者のところへ、コーディネーターが訪問し、必要に応じて年間10回を限度にICTの専門家を派遣。課題の見える化や、実際にIT導入に向けた要件定義を行い、ICTコネクトに所属する ITベンダーへ展開。それぞれのITベンダーからの提案を受け、事業者とマッチングしています。市内のITベンダーのサポート内容を見える化するだけでなく、事業者ごとの課題に具体的なプランを提示・比較検討できることで、より実効性のあるマッチングが可能となりました。

補助金も充実させています。中小企業を中心に、社員のデジタルリテラシー向上を支援し、デジタル人材を育成するための「デジタル人材育成支援サポート補助金」。実際にICTのソリューションを導入するための「生産性向上補助金」には、発注企業が市内であるか市外であるかによって傾斜をつけることで、ITの地産地消を促します。またベンダー向けにもニーズを受けて自社製品に仕上げていくための「ICT 技術開発サポート補助金」など、市内事業者のデジタル化だけでなく、質の高いサービス提供を推進しています。
2022年には津山市内のクリエイターによる「津山クリエイティブ人材ネットワーク」を結成。WEBデザイナーやカメラマンなど、クリエイターが中心となっており、現在は27事業者が所属しています。デザイン関連事業も大阪などの県外・市外への発注ではなく、市内への発注を促すことで地産地消につなげたい考えです。
ITC人材育成のための研修も開催しています。求職者や社員、さらに経営層向けまで、ニーズに合わせて層別に多彩な研修会を準備。初歩PCスキルから少人数限定のSE育成、専門研修、事例紹介セミナーも実施しています。
毎年異なる事業者へ実施しているデジタル化ニーズ調査では、当初とは逆転し、現在何らかのデジタル化を行っている事業者は7.5割以上に達しています。デジタル化支援の実績は、令和6年度支援企業数28社。金額にして5,500万円の実績を達成。製造以外にも林業・小売・医療・福祉など幅広く展開しています。
例えば林業では、日報・安否確認システムを導入したことで出退勤をデジタル化。これまで一度事業所に寄って打刻していたものが、直行直帰できるようになったことで稼働時間が20%増加しました。津山市内に多い小売業では、EC企業では2つの受注在庫管理システムを統一し、外注費を330万円/年削減。受注から出荷までのプロセスを自動化し、365日出荷体制を実現しています。
また研修会の受講者数も令和5年度は約450名、令和6年度は574名と、多くの参加実績を達成。働く人や求職者のデジタルリテラシー向上に貢献しています。

地域おこし協力隊の一員でもあるICTコーディネーターが、令和7年度に「株式会社地域のミカタ」を創業。津山高専の学生と連携し、安価なソリューションをノーコードツールで作り、地域の企業の IT導入を支援しています。「当初起業まで想定していなかったが、非常にありがたい事例」と沼氏。これをきっかけとして、津山高専のOBが設立したAI を活用して企業の課題を解決支援する企業のサテライトオフィスが、市内に設置されました。
商業高校とクリエイティブ人材ネットワークが講師となって地元の企業のCM動画を作成。ほかにも具体的な形にまでは至ってはいませんが、津山高専とは地域の課題をITで解決するための提案を行うという取組を地域の企業と行っています。市内の高校生・高専生と地元企業が一緒に取り組むことで、若者の市内定着を後押ししています。
~若者の雇用の選択肢を広げ、魅力のあるまちづくりを
「働こうにも働く先がないということ。情報通信業そのものが成長していかないと人材も雇ってもらえないので、やはり地域のIT投資を、地域のITベンダーに受けてもらう。IT産業の活性化というのは、非常に意味があると思っています」と沼氏は話します。そこで創業補助金を活用した、IT系企業の創業を後押し。さらに津山の取り組みを知ってもらうことで、都市圏のITベンダーの市内へのサテライトオフィスの誘致に取り組んでいきたい考えです。
全産業において、ITは必ず生産性向上に役立ちます。地域産業がデジタル化することで、無駄を削減し、効率化することで稼げる仕事になれば、給与も上がってくるはず。地域産業に付加価値を創造して、魅力ある雇用を創造・増加させ、持続的な地域社会につなげていくことが目標です。沼氏は「若者の職業の選択肢が広がり、最終的には若い世代の方が残ってくれたり、よそから来てくれたり、そういう町にしたい」と語ります。

当初、津山市内には情報通信業の業界団体はありませんでした。そのためゼロから企業団体を作ることに当初は苦労もあったと言います。つやまICTコネクトは少し緩やかな集まりとし、情報共有を主目的とした形に。より良い提案をした会社を、地域の企業に選んでもらうという仕組みにしたことで、競合関係にあたるITベンダーは健全な競合環境で切磋琢磨することで、より充実したデジタル化の推進を後押ししています。
つやま産業支援センターの強みは、企業に実際に訪問していること。年間訪問件数は1,000件を超えます。地域の企業で、どこの会社がどんなことをやっているかをほぼ全て把握しているのです。企業との関係性が非常に強く、信頼関係が築けているからこそ、IT支援が入りやすいといいます。受け身で待つのではなく、地道に企業訪問をしながら課題を見つけ、地域のITベンダーと結び付けることでデジタル化支援を行う。デジタルとアナログの融合こそが、つやま産業支援センターの特徴であり強みなのです。
つやま産業支援センター
〒708-0004 岡山県津山市山北663 津山市役所東庁舎1階
TEL:0868-24-0740
FAX:0868-24-0881
