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地域DX推進ラボ取組事例2025 ~ 堺DX推進ラボ

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“デジタル化止まり”を超えて—堺市と産学官金が連携し挑む本質的なDXの実践に向けた取組 ~ 堺DX推進ラボ
#インタビュイー

堺市 産業振興局 産業戦略部 地域産業課
 坂本 拓也 氏

#ラボ概要
産学官金が有機的に連携し、地域ぐるみで進める堺市DX推進モデル

大阪府で人口・面積が第2の政令指定都市である堺市は、伝統産業が息づくとともに、豊富な歴史文化資源を有し、金属加工や生産機械の製造を中心に製造業が盛んな地域です。

DX推進ラボ(以下ラボ)は、地域ぐるみでのDX支援体制を実現すべく構築された連携体で、堺市地域産業課が事務局となり、公的支援機関に加え、大学、IT企業、そして地域の中小企業と多くの接点を持つ金融機関など多様な主体が参画して活動しています。発足当初は8機関でしたが、現在は17機関へと拡大し連携の輪は広がっています。

堺DX推進ラボの構成機関(令和8年2月時点)

経産省の「DX支援ガイダンス」でも、DX支援において支援機関同士の連携の重要性が示されており、とくに地域金融機関は“主治医”としての役割が期待されています。信用金庫での勤務経験を持つ坂本氏は、「日常の業務の中で事業者と接点を持ちながら、さまざまな課題を共有し、財務状況を把握している金融機関と連携することは、地域の産業振興において欠かせない要素」と考え、ラボでも地域金融機関と連携を図りながら活動を行っています。

「堺市が事務局となって連携の場をつくり、地域ぐるみでそれぞれの得意分野を生かして取り組みましょうということで、私たちはその連携を促すようなファシリテーターとして活動を推進しています」(坂本氏)

#取組理由・課題・きっかけ
デジタル化を超えDXで都市の未来をつくる

堺市の最上位計画である「堺市基本計画2025」では、めざす都市像として「未来を創るイノベーティブ都市~変化を恐れず、挑戦・創造しつづける堺~」を掲げています。また、「堺産業戦略」においては、企業のポテンシャルを引き出し、地域全体の生産性・付加価値額を高める手段としてDXの推進が位置づけられており、DX支援を通じ都市像の具体化に挑戦しています。

市内企業の現状は、デジタル化(既存業務の効率化やIT導入にとどまる段階)の取組は全国と比較して一定の進捗はあるものの、新規事業創出やビジネス変革を伴う「本質的なDX」の実践という観点ではまだまだ遅れが見られました。経営資源が限られている中小企業では、独力ではDX推進は難しく、行政による支援アプローチも必要と考えられます。

「産業振興領域は不確実性が高い領域であり、まさに変化を恐れず挑戦・創造する姿勢が必要だと考えています。デジタル化にとどまらない“本質的なDX”の支援に挑戦することにより、価値創出や地域企業の成長につながる土台を築こうとしています。行政だけではできることに限界があるからこそ、多様な支援機関や外部との連携が鍵でした。地域ぐるみのDX支援体制として、ひとつのモデルケースになればと考えています。」と坂本氏は述べます。

#取組内容(挑戦したことや解決策を含む)
「堺DX診断」が事業者、行政、金融機関すべてにメリットをもたらす

坂本氏が令和5年度に堺市に着任した時点で、デジタル化を支える補助金や、同年度にスタートする「堺DX診断」など、活用可能なメニューが“手元のカード”として整いつつありました。ゼロからではなく先人の積み上げを起点に堺での活動がスタートしています。
「堺DX診断」はWebページより無料で活用でき、経営戦略や組織体制など、デジタル化に関する6つのカテゴリ、合計30問の設問に回答することで、手軽に自社のデジタル化の現状や課題を把握できるデジタル経営診断です。診断結果はレーダーチャートで表示され、地域の同業種のスコアと比較することも可能なツールです。

「自社の強みや弱みなどを客観的に把握でき、課題から次のアクションにつなげるためのきっかけとなるツールをイメージしています」と坂本氏。

この診断は、
・地域企業にとっては現状把握と気付きの機会
・堺市にとっては地域企業の共通課題を把握する政策検討の基礎データ
・支援機関にとっては地域企業とのコミュニケーションツールかつ支援メニューの入口

という使い方が可能であり、ラボ発足時においても地域の支援機関との連携の鍵となりました。令和5年の運用開始から診断実績は2,000件を超えています。

当初は診断件数を重視し目標数を掲げたものの、堺市内の事業者のみを対象にしており、堺市外にも営業エリアを持つ金融機関側への動機付けが難しく、連携が進まない場面もありました。しかしラボ連携のファシリテーターとして、金融機関の特性にあわせ、診断を入口としたDX個別相談会の開催を提案。診断をきっかけに企業と専門家が課題を直接話し合える場を設けることで、金融機関にとっても「顧客に丁寧に向き合う機会」として価値を感じてもらえるようなケースも生まれました。別支店での開催といった横展開が広がるなど、能動的関与が拡大するきっかけとなった一例です。

また支援機関側のマインド変革にも取り組みました。ラボ参画機関へのアンケートから、DXの本質への理解や支援のノウハウにバラツキがあるなど課題が顕在化。そこで支援機関にとっての「有益な参考書」と位置づけられる「DX支援ガイダンス」を活用し、経済産業省から講師を招き、ラボ参画機関向けに勉強会を開催。支援機関に求められる役割や重要性を再確認し、本質的なDX支援が支援機関自身の価値向上や、地域経済の持続的発展につながるというDX支援の意義を共有する場になりました。
共通の目的を持った仲間づくりを通じ、役割分担ではなく、それぞれの自主性や強みに基づいた有機的な連携が形成され、予算をかけずに3年で35回以上のセミナーやイベント、登壇機会が生まれるなど活動の幅が広がりました。

「手元の資源を起点に自分たちの出来ることを小さく実践することで、力を貸してくれる仲間が増え、巻き込むことで活動が広がったと感じています。」(坂本氏)

#結果(成果)
DX診断の結果をもとに「リスキリング補助金」と「新規事業創出プログラム」を組成
実効性のあるDX支援を具体化

DX診断で蓄積されたデータから、多くの事業者の共通する課題として、「デジタル人材の育成」、「新規事業創発」という2点が明確になりました。そこで人材育成にアプローチする施策として、令和6年度に「堺市中小企業DXリスキリング補助金」を組成。さらに新規事業創発に向け、令和7年度に新規事業創出やビジネス変革を支援するプログラム「堺 NeXt Drive(堺市DX新規事業創出業務)」を立ち上げ、現在、取組を進めています。

「堺 NeXt Drive」は、デジタル前提のビジネス環境において、単なるデジタル化ではなく、自社ならではの新たな価値創出の挑戦を支援する伴走支援プログラムです。

キックオフイベントには50社を超える企業が集まりました。公募の上、令和7年度は5社を選定し約半年で全6回のワークショップと各社10回以上の個別メンタリングを実施。ワークショップでは毎回5社が一堂に会し、それぞれの新規事業を検討し、参加者と共有、議論することで、切磋琢磨しつつ成長に向かって挑戦する仲間となり取り組みました。

「堺 NeXt Drive」キックオフイベントの様子①(大阪公立大学中百舌鳥キャンパスイノベーションアカデミースマートエネルギー棟)

「世間ではDXはデジタル化などを含む広い意味の言葉となっており、取組がデジタル化に行き着いてしまうのではないかという懸念もありましたが、プログラムでは企業の成長、売上向上、付加価値創出というDXの意義について最初にインプットし、“本質的なDX”に同じ目線で正面から向き合っていただきました。新規事業創出と言うのは簡単ですが、実際に取り組むことは決して簡単ではありません。そのなかで一社も欠けることなく最後まで走り抜けていただき、各参加者らしい新規事業の芽が生まれたことは大きな成果だったと思います。成果報告会の実施や事例集も作成予定ですので是非ご覧ください。」と坂本氏は話します。

プログラムにはラボ参画機関もオブザーバーとして参加し、参加企業とチームアップしてワークショップに臨みました。ラボ参画機関が議論に加わることで参加企業の取組や課題への理解や関係性を深め、今後のソリューション提案や伴走支援など、事業終了後の支援体制の構築や、ケーススタディとしての活用を通じて、ラボ参画機関のDX支援ノウハウの向上にも寄与するなど、地域ぐるみのDX推進を具体化しています。

「堺 NeXt Drive」キックオフイベントの様子②

こうした取組が評価され、堺市・堺DX推進ラボは「日本DX大賞2025サミット&アワード」内にて支援部門の「奨励賞」を受賞。

ラボの取組をきっかけに活動の幅が広がったことで(独)情報処理推進機構(IPA)の実施する「DX認定取得支援」への参加機会にもつながり、地域企業のDX認定取得を支援。令和6年度は2社取得済みで、令和7年度はさらに2社を支援中です。

「多様な主体との関係性が連携を通じて有機的に広がり、地域ぐるみでのDX支援の具体化に繋がってきていると感じています。」(坂本氏)

#展望(今後の計画/普及施策等)
行政の支援が終わっても継続するコミュニティづくりを

令和7年度より「堺 NeXt Drive」がスタートしたことで、デジタル化支援だけでなく、企業の価値創出やビジネス変革を見据えた“本質的なDX支援”へと、さらに踏み込んだ堺市・堺DX推進ラボ。このプログラムは次年度以降も継続する見込みです。令和7年度に参加した5社をはじめ、ラボ参画機関や次年度のプログラムに参加する新たな地域企業など、取組を通じて生まれたつながりを今後もコミュニティとして盛り上げていくことをめざしています。

プログラムを通じて、オブザーバーとして参加したラボ参画機関もDXの支援ノウハウを蓄積し、顧客に対してアプローチができるようになることで、地域として本質的なDXの取組を支援できるような体制を構築していきたい考えです。また、今後もDX認定の取得やDXセレクションに選定される地域企業を増やす取組を継続し、挑戦する企業を後押ししていきます。

#補足事項(取組の中経験した苦労や失敗、活用施策、協力者など)
予算ゼロでもそれぞれのできることを持ち寄って取組を実施

DX推進ラボとしての予算はゼロ。ですが各取組において会場や集客に関しては参画機関のリソースや得意分野を持ち寄ったり、時にはラボ外との連携も活用しながら取組を進めてきました。事務局はこうした多様な主体間の連携を促すハブとしての役割を担うことで、自然なコミットメントを引き出すように努めてきました。

「自分の出来ることからスタートし、堺市のチームメンバー、堺DX推進ラボ参画機関の皆さま、ラボ外の様々な機関の皆さまに支えられ、試行錯誤しながら取組を進めてきました。堺市において“堺DX推進ラボ”は“半分外・半分中”という一定の自由を確保しながら、許容可能な範囲で挑戦と連携を生み出す枠組みであり、堺の取組に不可欠な存在となっています。自律性がなければ形骸化してしまう懸念はありましたが、一方で意志さえあれば、自分一人では成し得ないことも、周囲の力を結んで形に出来る――その器として“地域DX推進ラボ”という制度が、活動の鍵だったと感じています。」(坂本氏)

#問い合わせ先

堺市 産業振興局 産業戦略部 地域産業創造課
590-0078 堺市堺区南瓦町31号 
TEL
072-228-7455
FAX
072-228-8816
URL
https://www.city.sakai.lg.jp/

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