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地域人材インタビュー2024 ~ 西野氏(北見市)

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焼肉を愛してやまないDX推進者、北見を世界から注目されるサステナ都市に
――北見地域DX推進ラボ
【インタビュイー】
北見地域DX推進ラボ
株式会社ロジカル 代表取締役 西野寛明 氏
【活動内容】~オホーツクバレーとは

 北見地域DX推進ラボでは、デジタル技術の活用を前提に、環境を大切にしながら一次産業を中心とした基幹産業や、地域に根ざす暮らしを重視した地域のコンセプト「オホーツクバレー」を掲げています。オホーツク地域は、北海道の北東部のオホーツク海沿岸のエリアのこと。オホーツクにおける中核都市の1つが北見市です。

 オホーツクバレーの概念の下、CO2削減といった地球全体の環境保全意識の高まりや、今後の世界的な食料需給などを背景に、デジタル技術を活かして世界に率先した食料生産や環境保全、ウェルビーイングといった取り組みを推進しています。地域の壁を越えた多様な人が集まるコミュニティーの中で、新たな産業創出や地域産業のアップデートなどを図っていくことを目指しています。

 地方創生を軸としたマーケティング会社である株式会社ロジカルは、北見地域DX推進ラボに参加する一社で、北見市に本社を置いています。同社の代表取締役を務める西野寛明氏は北見で生まれ育ちました。大学進学のタイミングで上京し、卒業後はSBI証券に勤めながら、同社が運営するSBI大学院大学に進学しMBAを取得。その後、2013年にUターンしてロジカルを起業しました。

 「北見に帰ろう」と思ったきっかけになった出来事が、SBI証券に勤務していた当時、北尾吉孝氏(SBIホールディングス代表取締役会長兼社長兼CEO)から、「(大学院での学びを生かし)世の中の役に立つことをやりなさい」と声をかけられたこと。いろいろと考えた末、「東京にいるより、北見に帰った方がお役に立てることが多そうだ」ということでUターンしてきたのだそうです

オホーツクバレーのイメージ
オホーツクバレーのイメージ
【モチベーション】~北見で社会のお役に立ちたいヤキニキスト
株式会社ロジカル 代表取締役 西野寛明氏
株式会社ロジカル 代表取締役 西野寛明氏

 西野氏は、自身のDX推進への思いについて、このように述べます。「オホーツク、北見が世界に誇る、尊敬される都市であって欲しいという願いがあります。また、自身が北見で生き、経済的付加価値を創出していく上で、自らの地域の強みを活かし、技術を積極的に受け入れていくことで世界に向けて価値創出をしていきたい」

 オホーツク地域で、一般によく知られているのがシベリアからやってくる流氷です。ホタテやカニなどの海産物やタマネギの産地としても有名です。「流氷や森林など豊かな自然と、それらの上で成り立つ水産業や農業などの一次産業や観光業が、オホーツクというブランドの基盤」と西野氏は考えます。

 北見市は日本有数の「焼肉の町」でもあり、焼肉店が多い他、キャンプで焼肉をする人たちも多いです。キャンプを楽しんだり、おいしいお肉を食べたりすることができるのも、北見市の豊かな自然と一次産業があってこそ。そして西野氏にとって、焼肉が北見で生きるモチベーションの1つにもなっています。西野氏はキャンプで焼肉をして帰るその足で、あるいは朝から焼肉をしてから出社することもあるほどの「ヤキニキスト」なのです。

 西野氏の生活や職場のすぐそばには、大好物の自然と焼肉があります。そうした環境も、デジタル技術があってこそ実現できている。そこで、地域にいる多様な人が集まるコミュニティーを作り、デジタル技術を使いつつ、地域や社会の繁栄のために新たな価値創造をしていく。オホーツクバレーで描くビジョンは、まさに西野氏自身が日々体現しています。その暮らしぶりを聞けば、特に満員電車でビル街に出勤し、朝から晩まで忙しく仕事をする多くの人たちにとって、それが魅力的に感じるのではないかと思います。

 北見の楽しい生活に欠かせない豊かな資源や農産物も、地球環境が生み出すもの。だから環境保全も、皆でしっかりやっていこう。こうした「北見っていいよね」と思わず共感したくなるビジョンが、オホーツクバレーの考え方です。

【成果】~焼肉を楽しみながら考える北見の魅力と未来

北見地域DX推進ラボ名物「焼肉ハッカソン」は、オホーツクバレーのコンセプトによるイベントです。焼肉や夜鍋メシを楽しみながら北見の食文化について考え、北見の魅力を高める、あるいは未来を作るデジタルな仕組みの開発に取り組むハッカソンです。地元企業や行政、大学などのチームが参加しています。

2025年は『厳寒の焼肉ハッカソン「焼肉は世界を救う2025」』と題して、289日にかけて行われました。北見市では毎年2月に、「北見厳寒の焼き肉まつり」を開催しています。このお祭りは、名前の通り「氷点下の屋外で、焼肉を食べるイベント」として人気で、全国から人が集まります。今回は、このイベントに合わせて開催されました。

年を重ねるごとにプロジェクトのレベルが高まっているそうで、「今回は特に、すぐに事業化できそうなほど完成度の高いプロジェクトが目立った」と西野氏。農業従事者向けのCO2削減に関するシステム、LINEを利用した環境保護の啓発システムなどがありました。

こうしたユニークなイベントも開催しながら、オホーツクバレーに共感する個人や企業のコミュニティーが着実に拡大しているとのことです。これまで5社のIT企業誘致に成功しています。

また、北見工業大学を核とした人材育成の取り組み、研究開発力を背景に、デジタル人材のUターン促進モデルや、新たなサービス創出などにも発展しています。最近は、オホーツクバレーの考え方で重視する環境保全にフォーカスした活動になっています。「ゼロカーボンやJ-クレジットなどをテーマとした取り組みを行っています」(西野氏)

ノーコードツールが扱える人材の育成にも取り組んでいます。「講師の先生が素晴らしかったのだと思いますが、セミナーの参加者さんたちがちゃんとノーコードツールの知識を持ち帰っていて、早速業務で生かしている、あるいは職の獲得につながったという声を聴いています」(西野氏)

【エピソード】~地域のアイデンティティに基づいたビジョンを明確に

IoT推進ラボ時代は、技術開発されたサービスの地域への社会実装や、地域企業からの共感を得ることなどが課題になっていました。これまでIT企業誘致に力を入れてきましたが、テレワークを活用しながらDX推進していく中で気づきがあったと西野氏は言います。

「企業誘致は結局、人材誘致。いかに個人の価値観に訴えかけて、『北見で活動したい』『北見に住みたい』と思ってもらうか」ということが大事なのではないかと西野氏。そこで、まずオホーツクバレーという地域のアイデンティティに基づいたビジョンの解像度を高めたのだそうです。

その上で、企業誘致の目的から、地域全体の産業アップデートへとコンセプトを変更。それにより、環境や一次産業といった地域の基盤となるセクションとの連携の中で、「手段としてのIT」がどうあるべきかが明確に描きやすくなり、企業からの共感も得られやすくなりました。

北見市に移転してきた5社については、もともと「環境保全やSDGsへの意識が高く、自分事として捉えている」「地域の課題をデジタルで解決する新しいサービスを作りたい」という思いがあった企業たちでした。そしてどの会社も、オホーツクバレーのコンセプトをすごく気に入って、ビジネスのアイデアが完全に固まっていないうちから北見に進出してきてくれたのだそうです。まさにビジョンの見直しの効果がてきめんであったわけですが、「成果という意味では、『まだこれから』というところです」と西野氏は言います。

【未来のビジョン、展望】

北見地域DX推進ラボが考える、北見市の未来展望は、以下の3つです。

・デジタル技術を活かして、日本一、世界一自然を大切にするシステムが産業、暮らしの文化としても実装され、環境先進地として認識されること。
・一次産業に対してもイノベーションを追求し、世界一豊かな食料生産力を持つ地域であること。
・自然と共存したライフスタイルにより世界から移住者が増え、グローバルな仕事が流通するビジネス環境となること。

「海外からの移住者も増やし、多様性ある地域にしたい」と西野氏は言います。「欧州は政治情勢が不安定化してきていて、米国については貧富の格差の拡大といった問題を抱えています。例えば、そうした方々の移住先として、北見やオホーツクをお勧めしたいと思っています」。

世界各国の人が北見に集まってくることで、世界中の人を相手にビジネスができるようにしたいとのことです。将来は、世界の人たちが、北見というサステナブルな都市の素晴らしさや、そこから生まれる技術やソリューションに注目してくれるようになることを目指します。

オホーツクバレーによる自然経済のイメージ
オホーツクバレーによる自然経済のイメージ
【インタビュイーからのメッセージ】

ビジョンドリブンなラボ運営による長期的な目線に、ぜひご注目ください。

【ラボ概要】

オホーツクバレーをコンセプトに、北見市、北見工業大学、首都圏IT企業、事務局的な地域の中核企業の組織により、新たな産業創出と関係人口拡大、地域のデジタル実装による既存産業のアップデートを目指している。

【問い合わせ先】

北見市役所商工観光部産業立地労政課 
TEL 0157-25-1210
[対応時間:平日845分〜1730分]

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