このページの本文へ移動

AI/IoT製品を横浜から生み出せ! 地道かつ確実な支援が成果へ――横浜市IoT推進ラボ

閲覧数:24 回

横浜発で2事例が製品化・事業化へ

横浜市では、横浜経済の強みである「ものづくり・IT産業の集積」を活かしつつ、ディープテックなどの先端技術を活用した新たな製品やサービス、ビジネスモデルを創出することを目的として、実証実験やビジネスマッチング、研究開発の伴走支援を行っています。

その中で主にIoT分野の支援に取り組む横浜市IoT推進ラボの事務局を担う、横浜市経済局産業連携推進課による近未来技術の製品開発支援の重要な役割の1つに、参画企業による実証実験のためのフィールド(実験場)調整の支援があります。その実証実験を通じて、新たな製品が実装化されることによる社会課題解決への貢献が目的となっています。この活動から、すでに製品化に至った事例が登場しており、着々と成果を出しています。

動き方としては、横浜市が公募で呼びかけるケースと、企業側からのプロジェクト提案があるケースがあります。今回は、そのうちの後者での事例2件の紹介です。

1つ目の取組は、2023年8月に製品発表を行った、みなとみらい21地区に研究所を構える京セラ株式会社による「分かりやすい字幕表示システム『Cotopat(コトパット)』」の実証実験。Cotopatは、話した⾔葉をリアルタイムに認識して、⽂字・図解・動画をスクリーンに表⽰することができます。さらに、英語や中国語などを含む7種類の⾔語への翻訳表示にも対応しています。

Cotopatのシステムイメージ
使用シーンのイメージ

Cotopat誕生のきっかけは、コロナ禍で生じたコミュニケーションの変化でした。とりわけ着目したのが、受付や窓口業務において「マスク越しで口元が見えず、コミュニケーションがとりづらい」という課題。そこで、各所に設置されていた上記のようなアクリル板に話者が伝えたい内容を字幕表示する仕組みの検討を開始。区役所や横浜市内にある施設の窓口業務で導入して実証を行いました。

・中区役所⾼齢・障害⽀援課
・⾦沢区役所⼾籍課、保険年⾦課 
・緑区役所保険年⾦課 
・障害者スポーツ⽂化センター 横浜ラポール

マスク越しのコミュニケーションのフォローとしてだけではなく、外国人の方の接客時や、聴覚が不自由な方やご高齢の方などの手助けにもなるのではと考えたそう。開発期間としては全体で2年間かかり、じっくりと実証に取り組みました。

実施後のアンケートでは「次回も窓⼝で利⽤したい」との回答が75%以上(回答98⼈) と上出来であり、変換精度の満⾜度高く上出来の結果。さらに1回の窓⼝対応の時間も短縮されたということで、「⽂字への変換が早くスムーズで使いやすい」というご意⾒を多数いただきました。その後も、医療機関や大学などの教育関係、観光業などから、多くの問い合わせが寄せられているということです。

もう1つの取組は、横浜市都筑区にある横浜国際プールで実施した、「AI魚体サイズ測定カメラ」の実証。横浜市金沢区に研究開発拠点を置くIT企業の、株式会社アイエンターによるものです。こちらは既に製品化されている同社の「i-ocean(アイオーシャン)」のバージョンアップが目的でした。水中を泳ぐ魚のサイズを、手を触れることなく計測が可能な水中カメラの実証実験です。このカメラは、魚の養殖場において活用されているシステムです。従来の方法では、自ら魚を取り上げて直接測定していたため、魚が傷んだり弱ったりしてしまう可能性がありました。また測定の仕方も、熟練度(慣れ)が必要でした。




AI魚体サイズ測定カメラの概要

画像認識の例(アトランティックサーモン)

そこでこのカメラで撮影した動画データから、AIの画像認識技術を用いて魚を特定し、2眼レンズと魚の位置情報から、サイズ(尾叉長/標準体長/体高)を測定することを可能にしたということです。この実証では、養殖場の方により便利に使用してもらうための計測精度向上を目指し、施設の休館日を利用して、実際に水深2.5mのサブプールを利用して行われました。結果として、1.5m以上離れた対象物に対して、従来バージョン比で3.8%の測定精度向上の実現を確認。それにより、2023年9月にi-oceanの新バージョンをリリース。測定精度向上により、魚の育成状態とそれに伴う適切な給餌量や収穫高をより正確に把握することが可能となり、養殖場の魚の出荷品質がより向上させられるようになりました。

横浜発から革新的な製品やサービスの創出

横浜市では、フィールドになりそうな市関連施設の候補を選定し企業に提案しています。実験の内容によって、行政機関の複数の部署、さらに複数の行政機関の調整が必要になります。それを企業自身で行おうとすると、どの行政が関係しているのかの把握から、手順の確認まで、非常に手がかかり、かつ最適な解決ができない可能性もあります。そこで横浜市の担当が間に入り、行政の関連部署および施設側との調整役を担っています。

まず横浜市側が、所管課の要望やニーズ把握に注力。そのうえで、より親和性の高いフィールド選定および調整を実施します。そうすることで、フィールドの課題解決と企業が求める有益な実証実験の両立が実現できるようなコーディネートを実現します。

実験フィールドにかかわる関係者らに対しては、実機に触れる体験会(デモ会)を開催し、製品の良し悪しを実証前に体験してもらうことで実証のイメージを掴んでもらえるような機会を提供。それで、実証のイメージをつかんでもらうようにしたということです。それと同時に、企業にとっても、実証する機器のユーザーインタフェース(UI)やハードウェアの課題のあぶり出しが事前に行えたことも利点となっているそうです。

このほかにも、マクセルフロンティア株式会社が開発する『害獣捕獲監視システム マタギっ娘』など、横浜市が実験フィールドの提供に協力した事例で、製品化が近い事例があるとのこと。今後も、新たな製品・ビジネスモデルを創出する支援を行うことで、横浜発の製品やサービスを開発してもらい、社会課題解決につなげていくことを目指していくということです。

所管課との調整においては、「製品そのものの評価と実証への関心は比例しない」ことを実感したそう。協力を仰ぐ方は、そもそも産業支援とは直接かかわっていないということもあり、やはりこころよく動いてもらうためにもモチベーションが必要です。さらに2事例は、コロナ禍最盛期であったため、現場ヒアリングも難航したということです。特に、Cotopatは、相談を受けた当初はまだ試作機がなく、アイデアのみであったため、その説明には工夫が必要でした。

そうした中でも、企業をフィールド提供者やフィールドを所管する庁内部署と引き合わせ、実証実験に向けた調整を丁寧に行うことで実施につなげたそうです。さらに、実証実験に関するフィードバックを適宜行うことで製品開発に反映してもらい、製品化に向けて必要な機能などを盛り込んでブラッシュアップにつなげています。

事前調整にあたっては、経済局としての立場のみで進めるのではなく、所管する庁内関係者やフィールド関係者の立場やニーズを考慮しながら、実現に向けて丁寧に進めることを意識したとのことです。

その努力には何か特別で画期的な手法があるわけでもなく、支援側はとにかく「丁寧に」であることに徹し、当然ながら「企業さん自身の力」が最も重要であるということを述べていました。そして、気持ちが通じ合い、「はまった!」と感じる瞬間、実証の現場でユーザーが喜ぶ声が聞けた瞬間は、大きな喜びを感じるということでした。

 

 


2017年にAI/IoTなどの先端技術を用いた新たな製品・ビジネス創出支援を通じて社会課題解決を目指す取組を開始し、「地方版IoT推進ラボ」の一員として選定を受けた。実証実験支援と中小企業の生産性向上といった企業支援を取組の柱としている。

問い合わせ先
横浜市経済局ビジネスイノベーション部 イノベーション推進課
横浜市IoT推進ラボ担当 045-671-2748
 

横浜市IoT推進ラボの取組みはこちら
 

SNSでシェアする
Xでシェアする Facebookでシェアする
記事一覧ページに戻る

事務局の他の記事

製造カテゴリの他の記事