CPS (Cyber Physical System)のミニチュアを体験して、自分の現場でのIoT実装をイメージする
公開日:
2022年3月30日(水)
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神奈川県は、太平洋ベルトにおいて中核を担う大規模な工業地帯であり、県内の工業団地の数は80にも上り、自動車、造船、化学、電機、重工業などと幅広い分野をカバーしています。日本全体の工業生産額の多くを太平洋ベルトの工業地帯が占めており、神奈川県内のたくさんのものづくり系中小企業がその生産を支えています。
産業技術や科学技術に関する研究開発、技術支援などの業務を担う、地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所(KISTEC)が神奈川県と共に運営する「神奈川県IoT推進ラボ」では、IoTを「知る」「試す」「使う」「育てる」「守る」をキーワードに、中小企業のIoT技術導入に向けた支援を行っています。
神奈川県においても、中小企業へのIoTの普及が十分に進んでいるとは言い難い状況であるといいます。その背景として「IoT技術を導入する企業側の資金面だけでなく、人材不足なども挙げられます」と川瀬伸之氏は述べています。
「IoT技術の導入を進める上でIoTにより解決すべき社内の具体的な課題を抽出できる人材、社内で中心となってIoTシステム導入を推進できる人材が不可欠であり、それらの人材を育成するステップについて、経済産業省や公益財団法人JKAによる補助金等といった外部資金を活用しながら、さまざまな取り組みをしています」(川瀬氏)。
「育てる」の取り組みは、以下の2つに大別できるそうです。
・「IoTのユースケースや概要を知る」
IoT・AIなどに関する講演、IoT事例の見学、IoT技術相談
・「IoTを実現する技術を具体的に学ぶ」
Raspberry Piを用いた体験学習、PLC(産業用コントローラ)のプログラミング
IoT導入を進めるには、IoT技術により解決すべき社内の具体的な課題を認識し、その導入効果をイメージすることはもちろん、IoT導入に必要となる作業およびそれを利用する技術についても具体的にイメージできることが重要であると考えているとのことです。
「特に、スモールスタートでIoT導入に着手する場合、社内での継続的な取り組みが不可欠であり、具体的な技術と作業をイメージしながらIoT技術の導入および改善を中心的に進める人材の重要性が一層大きなものとなります」(川瀬氏)
まず、安価なシングルボードコンピュータであるRaspberry Piの操作や、IoTの実践では不可欠なスキルともいえるPythonプログラムの実行および動作の確認などを、受講者に体験してもらう機会を作っています。
さらに、PLCプログラミング講座においては、効率的なプログラミング手法を紹介した上で、実際にプログラミングをしてみた後、実機での実行・動作確認をしてもらいます。
PLCプログラミング講座は、自動プレス加工ラインを模したミニチュア装置の実物と、それをPC画面上に仮想的な機械を表現できる3Dシミュレータを用いています。
この教材の実機とシミュレーションの3Dデータは、同じPLCのプログラムで動作しています。「日本でPLCを動かす言語はラダー図が主流ですが、ラダー図はリレーによる論理回路を記述するため、データ処理がベースとなるITやIoTではその記述法が適切ではありません。そのため、ここではST言語を用いています」と、奥田誠氏は説明します。ST言語はデータの可視化などで必要な数値演算式の表現など、ラダー図が苦手とする情報処理に適しています。また、モジュールごとにプログラム動作の定義をしているので、実際の設備設計を模した動作仕様の検討が体験できるようになっているということです。
PCのシミュレータで動作確認をした後に、実機の動作確認をすることが出来るCPS(Cyber Physical System:バーチャルなデータと実機データを連動させるシステムのこと)の基本的な動きの一部を体験することができるのです。
PLCプログラミング講座について、受講者に対して行ったアンケートの結果では、85%以上の受講者から紹介したPLCプログラミング手法を「積極的に使いたい」などの内容面について肯定的な評価が得られているということです。
さらに、IoT・AIに関する講演、IoT事例の見学、Raspberry Piを用いた体験学習、IoT技術相談などを1日にまとめたフォーラムを開催しており、多数の中小企業が参加しているそうです。
「参加者さんからは、『IoT技術の最新動向について、知ることができて良かった』『IoTの導入例を見学することでイメージが掴めた』『目で見て触って、体験することができて良かった』などの声がありました」(川瀬氏)。見学会や体験学習について、参加者の90%が「有意義だった」と回答していたということです。
受講者にもともと備わった知識や習熟度などの差によって、演習の進行速度に差が生じてしまうためです。「演習の内容を難しいと感じる受講者用に虫食いのサンプルプログラムを用意していますが、それでも時間調整はなかなか難しいところではあります。進行速度の速い受講者用には追加の課題を用意するなどの配慮や工夫をしていけたらと思います。」と奥田氏は答えています。
さらに、コロナ禍により、さまざまな活動に制約がかかることがとても悩ましいといいます。例えば、これまでよく告知方法として使ってきたチラシ配布がままならず、Webページやメルマガ広告を用いた告知にも課題感を抱えているということです。また、感染状況によって、フォーラムの中止を余儀なくされることもよくあったということです。実機を用いた演習が大事な役割を担っているためオンライン化はなかなか厳しいそうで、今後の1日でも早いコロナの状況改善を祈るしかない状況ともいえます。
そのような現状ではありますが、「オンラインでの取り組みの併用を試行錯誤しながら、今後は、昨年度に導入したローカル5G実証環境も取り入れた教育やイベントの実施を検討していく」と水矢氏は今後について述べています。
本ページで紹介した一部事業は、競輪の補助を受けて実施しました。
産業技術や科学技術に関する研究開発、技術支援などの業務を担う、地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所(KISTEC)が神奈川県と共に運営する「神奈川県IoT推進ラボ」では、IoTを「知る」「試す」「使う」「育てる」「守る」をキーワードに、中小企業のIoT技術導入に向けた支援を行っています。
神奈川県においても、中小企業へのIoTの普及が十分に進んでいるとは言い難い状況であるといいます。その背景として「IoT技術を導入する企業側の資金面だけでなく、人材不足なども挙げられます」と川瀬伸之氏は述べています。
「IoT技術の導入を進める上でIoTにより解決すべき社内の具体的な課題を抽出できる人材、社内で中心となってIoTシステム導入を推進できる人材が不可欠であり、それらの人材を育成するステップについて、経済産業省や公益財団法人JKAによる補助金等といった外部資金を活用しながら、さまざまな取り組みをしています」(川瀬氏)。
「育てる」の取り組みは、以下の2つに大別できるそうです。
・「IoTのユースケースや概要を知る」
IoT・AIなどに関する講演、IoT事例の見学、IoT技術相談
・「IoTを実現する技術を具体的に学ぶ」
Raspberry Piを用いた体験学習、PLC(産業用コントローラ)のプログラミング
IoT導入を進めるには、IoT技術により解決すべき社内の具体的な課題を認識し、その導入効果をイメージすることはもちろん、IoT導入に必要となる作業およびそれを利用する技術についても具体的にイメージできることが重要であると考えているとのことです。
「特に、スモールスタートでIoT導入に着手する場合、社内での継続的な取り組みが不可欠であり、具体的な技術と作業をイメージしながらIoT技術の導入および改善を中心的に進める人材の重要性が一層大きなものとなります」(川瀬氏)
業務での実装がイメージしやすい実機やシミュレーションを再現
「IoT技術やその導入作業の具体的なイメージを持つには、“頭で分かる”だけではなく、実際に技術的な作業を体験してもらうことが重要」と水矢亨氏は説明します。そのため、実機を用いた体験学習や実習に力を入れているということです。まず、安価なシングルボードコンピュータであるRaspberry Piの操作や、IoTの実践では不可欠なスキルともいえるPythonプログラムの実行および動作の確認などを、受講者に体験してもらう機会を作っています。
さらに、PLCプログラミング講座においては、効率的なプログラミング手法を紹介した上で、実際にプログラミングをしてみた後、実機での実行・動作確認をしてもらいます。
PLCプログラミング講座は、自動プレス加工ラインを模したミニチュア装置の実物と、それをPC画面上に仮想的な機械を表現できる3Dシミュレータを用いています。
自動プレス加工ラインを模したミニチュア装置
この教材の実機とシミュレーションの3Dデータは、同じPLCのプログラムで動作しています。「日本でPLCを動かす言語はラダー図が主流ですが、ラダー図はリレーによる論理回路を記述するため、データ処理がベースとなるITやIoTではその記述法が適切ではありません。そのため、ここではST言語を用いています」と、奥田誠氏は説明します。ST言語はデータの可視化などで必要な数値演算式の表現など、ラダー図が苦手とする情報処理に適しています。また、モジュールごとにプログラム動作の定義をしているので、実際の設備設計を模した動作仕様の検討が体験できるようになっているということです。
PCのシミュレータで動作確認をした後に、実機の動作確認をすることが出来るCPS(Cyber Physical System:バーチャルなデータと実機データを連動させるシステムのこと)の基本的な動きの一部を体験することができるのです。
自動プレス加工ラインの3Dシミュレータ
PLCプログラミング講座について、受講者に対して行ったアンケートの結果では、85%以上の受講者から紹介したPLCプログラミング手法を「積極的に使いたい」などの内容面について肯定的な評価が得られているということです。
さらに、IoT・AIに関する講演、IoT事例の見学、Raspberry Piを用いた体験学習、IoT技術相談などを1日にまとめたフォーラムを開催しており、多数の中小企業が参加しているそうです。
「参加者さんからは、『IoT技術の最新動向について、知ることができて良かった』『IoTの導入例を見学することでイメージが掴めた』『目で見て触って、体験することができて良かった』などの声がありました」(川瀬氏)。見学会や体験学習について、参加者の90%が「有意義だった」と回答していたということです。
コロナ禍の制約がとても悩ましい
「実機を用いた体験学習や実習に力を入れているので、当日の時間配分に苦労しています」と、奥田氏は演習の進行における悩みについて述べました。受講者にもともと備わった知識や習熟度などの差によって、演習の進行速度に差が生じてしまうためです。「演習の内容を難しいと感じる受講者用に虫食いのサンプルプログラムを用意していますが、それでも時間調整はなかなか難しいところではあります。進行速度の速い受講者用には追加の課題を用意するなどの配慮や工夫をしていけたらと思います。」と奥田氏は答えています。
さらに、コロナ禍により、さまざまな活動に制約がかかることがとても悩ましいといいます。例えば、これまでよく告知方法として使ってきたチラシ配布がままならず、Webページやメルマガ広告を用いた告知にも課題感を抱えているということです。また、感染状況によって、フォーラムの中止を余儀なくされることもよくあったということです。実機を用いた演習が大事な役割を担っているためオンライン化はなかなか厳しいそうで、今後の1日でも早いコロナの状況改善を祈るしかない状況ともいえます。
そのような現状ではありますが、「オンラインでの取り組みの併用を試行錯誤しながら、今後は、昨年度に導入したローカル5G実証環境も取り入れた教育やイベントの実施を検討していく」と水矢氏は今後について述べています。
本ページで紹介した一部事業は、競輪の補助を受けて実施しました。