IoTにかかる実証実験の「実証フィールド調整」を支援し新規ビジネス創出を促進 I▫TOP横浜(横浜市IoT推進ラボ)

2023/03/23(木)
1859年の横浜港開港以来、横浜市は「日本の玄関口」として、貿易や商業などをけん引してきた港湾都市です。国内有数の産業地域である京浜臨海部や1000社を超える企業・事務所が立地するLINKAI横浜金沢など工業集積地域を有します。

横浜市内には、製造業約6000社、IT産業約3000事業所が拠点を置いています。横浜の経済の強みである「ものづくり・IT産業の集積」を活かし、IoTなどを活用したビジネスに向けた交流、連携、プロジェクトの推進、人材育成の場となるべく2017年(平成29年)に立ち上がったのが、「IoTオープンイノベーションパートナーズ(I▫TOP横浜:アイトップよこはま)」です。

IoT製品開発を目指す企業にとっては実証実験のフィールド確保が課題

I▫TOP横浜は、AI/IoTなどの先端技術を用いた新たな製品・サービスにかかるビジネス創出支援を通じて社会課題解決を目指すオープンプラットフォームです。 実証実験支援と中小企業の生産性向上といった企業支援を柱とし、2022年11月末現在で約630の企業・団体が参画しています。参画企業・団体に対しては、Webサイトや週に1回程度配信しているメールマガジンを通じて、採択プロジェクトに関する情報や新規プロジェクト募集告知などの情報発信をしています。

I▫TOP横浜としての重要な取り組みの1つが、参画企業による実証実験のためのフィールド(実験場)調整の支援です。企業が開発中の製品の実験フィールドをお探しの際に、実証フィールドの候補を企業に提案し、行政の関連部署や施設側との調整役を担います。

通常、企業が実証実験フィールドを探す際には、フィールドとの調整に多くの労力と時間を割くことが一般的で、開発プロジェクト自体がとん挫してしまうケースも少なくないそうです。

例えば、実証実験のために公道を使用したいケースであれば、管轄の警察や官公庁などに申請の上、実験本番では事故が発生することがないよう、安全対策を万全に行わなければなりません。また公園がフィールドであれば、施設利用者に危険が及ばないように十分配慮しながら、敷地の一角を使用するといった運用になります。

管理する施設を実証実験フィールドとして提供する際には、実験実施にあたり公園利用者などに周知を行わなければならないなど、施設側にとっても大きな負担が発生します。

それを引き受けるからには、当然、施設側にもメリットが必要ですが、実証実験を通じて、施設内の課題を解決する新たな製品・サービスを体験できるなどのメリットがフィールド側にはあります。

一方、企業側は、実証実験フィールドを使用する際には、まず「どういう手順で、どこに、何を申請したらよいのか」、見当がつけられないことも少なくありません。

そこで、I▫TOP横浜が企業の代わりに、フィールドとして利用したい施設側や行政の関連部署などの間に入って折衝を行うことで、本来かかる企業側にとっての大きな負担を軽減しています。

それにより、企業側は製品開発や実験の準備に注力できるようになり、実証実験実施のハードルが低くなります。さらに横浜市では、実証実験のフィールドと事前に調整し、フィールドが抱える課題に見合ったテーマをあらかじめ定めた上で実証実験の募集を行う「I▫TOP横浜ラボ」の仕組みも用意しています。

コロナ禍での商業施設の賑わい創出、障害者スポーツや文化活動の充実等をIoTで実現する

令和4年度は横浜南部市場と横浜市障害者スポーツ文化センター「横浜ラポール」をフィールドとしてテーマを(以下)設定し、実証実験の募集と実施を行いました。

横浜南部市場は、令和元年の複合商業施設「ブランチ横浜南部市場」開業とともに、「横浜南部市場食の専門店街(旧名称:食品関連卸売センター)」もリニューアルし『物流』と『にぎわい』の創出を目指してきました。横浜南部市場をフィールドとした「コロナ禍における商業施設や市場の活性化」に関する実証プロジェクトでは、9件のプロジェクトが採択されました。

そのうちの1つ、セーフィー(株)による「クラウドカメラによる店舗利用状況確認」は、カメラ映像のAI解析により、店舗の賑わいや混雑状況のデータを取得および可視化し、最適な売り場配置などを検討するというプロジェクトです。セーフィー(株)は、このプロジェクトで実証実験を行った新製品「Safie One(セーフィー ワン)」を2022年9月に販売開始しています。

Safie One(セーフィー ワン)

障害者のためのスポーツ・文化活動施設を備える横浜ラポールをフィールドとした「障害者のスポーツや文化活動の充実、施設の利便性向上」に関する実証プロジェクトでは6件のプロジェクトが採択されました。そのうち製品化に至ったのが、三菱総研DCS㈱による「コミュニケーションロボットを使ったワークショップ」のプロジェクトです。

三菱総研DCS㈱は2022年7~8月に横浜ラポールで実証実験を実施した後、同年10月に特別支援学校・学級向けコミュニケーションロボットサービス「Link&Robo for グローイング」として発表しました。こちらは、ロボットと話す・動かすことを通して、言葉を話すことによるコミュニケーションが苦手な子どもたちの自己表現をサポートするサービスです。

Link&Robo for グローイング

とにかく地道なコミュニケーションの積み重ねが大事

企業とフィールド、双方のマッチングは、I▫TOP横浜を担当する職員の地道な調整事務で成り立っています。企業をフィールド提供者やフィールドを所管する庁内部署と引き合わせ、実証実験に向けた調整に丁寧に取り組んで、実施につなげているそうです。

横浜市経済局産業連携推進課の森幸太郎氏は、I▫TOP横浜を担当するようになってから、庁内の他局や他部署とコミュニケーションする機会が格段に増したと話します。

「官公庁で仕事をしていると、庁内の他部署がどんな仕事をやっているか、なかなか触れる場面がありません。I▫TOP横浜で実証実験支援を担当することにより、さまざまな企業の方と話をする機会が増えたことはもちろん、庁内のいろいろな人と話す機会も増えました。

そのことで自分自身の視野の広がりを実感しており、それがI▫TOP横浜を担当していてよかったと思うことの1つでもあります」(森氏)

IoT製品は、ハードウェア、ソフトウェア、エレキ、サービスなど多岐にわたる分野がからみあって成り立ちます。そうした製品をうまくまとめあげるため、企業も従来のような役割ごとの縦割り組織から、さまざまな役割が横連携する横連携組織へと改革が進められることがよくあります。森氏も、参画企業から組織に関して苦労しているという声を聞くことがあるといいます。

また、現状の官公庁においても同様の課題を抱えていることから、共感できることも多いそうです。

産官で連携してIoT製品やサービスを創出していく上で、さまざまな立場の人や組織をつなぐコミュニケーションをいかにうまく行うかが、今後ますます重要になっていきそうです。
 

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