自分たちの困りごとは何か? それをIoTでどうやって解決するか?(静岡県IoT推進ラボ)
公開日:
2023年3月23日(木)
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東京と名古屋のちょうど間に位置する静岡県は製造業が盛んであり、バイクや自動車などの輸送機器、ピアノなどの楽器、プラモデルといった、さまざまな有名メーカーの数々が拠点を置いています。製造業の現場においてIoTの本導入の事例が聞こえてくるようになってきた昨今ですが、静岡県としてもIoT推進に力を入れています。
静岡県IoT推進ラボは、静岡県工業技術研究所(工技研)に設置した支援拠点であり、IoT推進をリードする機関として、静岡県の地方版IoT推進ラボの事務局である静岡県産業振興財団と連携し、地域におけるIoTプロジェクトを創出するための支援を行っています。
公設試験研究機関が担う、本格的なIoT実践施設
静岡県は、地方版IoT推進ラボとして、2015(平成27)年に静岡県産業振興財団を事務局に発足し、座学や実習、ベンダーやSIerへの斡旋等の支援活動を実施してきました。しかしながら、企業を直接支援する拠点がないために、具体的な現場実装につながる実習等の運営に課題を抱えていました。
そこで、2019(令和元)年に、さまざまな設備や技術的知見を持つ公設試験研究機関(公設試)である工技研に拠点を整備することで、より実践的な活動を進めることとしました。支援拠点としての静岡県IoT推進ラボは2021(令和3)年の浜松、沼津へのサテライト拡張に伴い、2022(令和4)年第4期の現在、3拠点体制となっています。
支援団体、地方公設試、大学、行政が一体となった伴走型でIoT導入を支援
静岡県IoT推進ラボの施設は、民間企業の公募により無償でIoT関連技術を体験できる「展示体験室」と「IoT研修室」で構成しています。展示体験室にはソフトウェアや機械などIoT支援技術を提供する15社の企業ブース(静岡県IoT推進ラボ:8社、サテライト浜松:4社、サテライト沼津:3社)に加え、各会場に工技研ブースを設けネット接続により各会場を閲覧できる環境も整備しています。
展示室では、見学者に対して様々な稼動展示を体験できます。導入効果の確認や接続テストもできるとのことです。展示室にはこれまで2,000人以上の見学者が訪れています。出展企業は同ラボの仲介で導入先候補の企業の紹介が受けられ、実導入につながっている実績もあります。
現在の展示内容は、プレス加工機の見える化システム、生産ラインIoT、工作機械IoTなど製造業系の技術展示が目立つ他、ユニークなところだと養鱒IoTなど水産系の事例もあります。今期には支援企業同士のコラボ出展も実現させています。今後は、大手のITベンダーや通信会社などにも声掛けし、支援の協力をお願いしていきたいということでした。なお、展示については、Googleマップで「静岡県IoT推進ラボ」を検索すると、360°ビューの写真がいくつか公開されており、そこから展示の様子を覗くことができます。
また2020年(令和2年)8月から開始した産業技術総合研究所(産総研)の 「つながる工場テストベッド事業」 として、静岡県IoT推進ラボは同研究所との共同研究である 「静岡県地域企業等へのIoT導入強化に関する研究」 に取り組んでいます。
2021年度(令和3年)の3期ではアイエイアイの電動サーボプレスを用いたIoT化の実例として、プレス機稼働状況の見える化と遠隔通信の仕組みを体験および学習できる環境を構築しました。手作業の見える化のプログラム作成には、中小企業への技術移転の容易さを考慮してローコード開発環境のNode-Redを用いています。
同ラボでは、座学習得から実習、現場実装、成果発表まで3カ月かけてじっくりと、支援団体、地方公設試、大学、行政が一体となって伴走型で支援する「IoT大学連携講座」という取り組みが特色となっています。この取り組みは2期目から実施しており、今期で3年目です。
実習で使用する教材は「現場実装できるもの」かつ「ローコードあるいはノンコードな開発環境であること」を条件としており、Raspberry PiやNode-REDなど比較的容易で皆が学習に取り組みやすい技術を選定し、実際に手を動かして習得してもらえるようにしているとのことです。
同講座には、これまでに中小企業58社が受講し、そのうち6割が現場実装を実現しているとのことです。同ラボとしては、さらに現場実装の比率を増やしていこうと奮闘しています。過去の取り組み内容としては、射出成形機の温度管理、冷凍庫の温度管理、作業日報のデジタル化、砂処理設備の稼働回数把握などがありました。
参考:
https://www.iri.pref.shizuoka.jp/wp/wp-content/uploads/2022/11/IRIS_Report_15_2022_overall.pdf
課題を明確に!
大学連携講座を受けて十分な技術知識を付けた参加企業たちが、実際の設備投資(本導入)にたどり着く確率は20~30件のうち1件程度ということです。この理由の1つとして、一緒に導入を進める技術パートナーがうまく見つからないこともあるのだそうです。
そこで静岡県IoT推進ラボが仲介役となってラボ内でも展示している支援企業を紹介したり、企業に依頼するにあたっての案件整理や計画の支援などをしたりしています。
大学連携講座を受講する企業たちの多くが苦労している部分が、「課題の明確化」であると静岡県工業技術研究所 機械電子科の赤堀篤氏は言います。
「まず『自分たちにとっての一番の課題(困りごと)は何か』をはっきりとさせた上で、要件や計画を整理し、協力企業などにもしっかり説明できる状態にしておくことが大事であると、講座では口を酸っぱくして、何度も説明し続けるようにしています」。逆に言うと、そこがうまくいけば、設備投資や本導入はすんなりとうまくいくということなのでした。
しかしながら、半導体不足を背景として、電子部品やPLCなどの調達が不安定な状況が今も続いており、それが現場実装の壁となってしまうことも少なくないとのこと。この活動に限らず、今多くの製造業を悩ますこの問題が、1日でも早く解決されることを願うばかりです。
静岡県IoT推進ラボは、静岡県工業技術研究所(工技研)に設置した支援拠点であり、IoT推進をリードする機関として、静岡県の地方版IoT推進ラボの事務局である静岡県産業振興財団と連携し、地域におけるIoTプロジェクトを創出するための支援を行っています。
公設試験研究機関が担う、本格的なIoT実践施設
静岡県は、地方版IoT推進ラボとして、2015(平成27)年に静岡県産業振興財団を事務局に発足し、座学や実習、ベンダーやSIerへの斡旋等の支援活動を実施してきました。しかしながら、企業を直接支援する拠点がないために、具体的な現場実装につながる実習等の運営に課題を抱えていました。
そこで、2019(令和元)年に、さまざまな設備や技術的知見を持つ公設試験研究機関(公設試)である工技研に拠点を整備することで、より実践的な活動を進めることとしました。支援拠点としての静岡県IoT推進ラボは2021(令和3)年の浜松、沼津へのサテライト拡張に伴い、2022(令和4)年第4期の現在、3拠点体制となっています。
支援団体、地方公設試、大学、行政が一体となった伴走型でIoT導入を支援
静岡県IoT推進ラボの施設は、民間企業の公募により無償でIoT関連技術を体験できる「展示体験室」と「IoT研修室」で構成しています。展示体験室にはソフトウェアや機械などIoT支援技術を提供する15社の企業ブース(静岡県IoT推進ラボ:8社、サテライト浜松:4社、サテライト沼津:3社)に加え、各会場に工技研ブースを設けネット接続により各会場を閲覧できる環境も整備しています。
展示室では、見学者に対して様々な稼動展示を体験できます。導入効果の確認や接続テストもできるとのことです。展示室にはこれまで2,000人以上の見学者が訪れています。出展企業は同ラボの仲介で導入先候補の企業の紹介が受けられ、実導入につながっている実績もあります。
現在の展示内容は、プレス加工機の見える化システム、生産ラインIoT、工作機械IoTなど製造業系の技術展示が目立つ他、ユニークなところだと養鱒IoTなど水産系の事例もあります。今期には支援企業同士のコラボ出展も実現させています。今後は、大手のITベンダーや通信会社などにも声掛けし、支援の協力をお願いしていきたいということでした。なお、展示については、Googleマップで「静岡県IoT推進ラボ」を検索すると、360°ビューの写真がいくつか公開されており、そこから展示の様子を覗くことができます。
また2020年(令和2年)8月から開始した産業技術総合研究所(産総研)の 「つながる工場テストベッド事業」 として、静岡県IoT推進ラボは同研究所との共同研究である 「静岡県地域企業等へのIoT導入強化に関する研究」 に取り組んでいます。
2021年度(令和3年)の3期ではアイエイアイの電動サーボプレスを用いたIoT化の実例として、プレス機稼働状況の見える化と遠隔通信の仕組みを体験および学習できる環境を構築しました。手作業の見える化のプログラム作成には、中小企業への技術移転の容易さを考慮してローコード開発環境のNode-Redを用いています。
同ラボでは、座学習得から実習、現場実装、成果発表まで3カ月かけてじっくりと、支援団体、地方公設試、大学、行政が一体となって伴走型で支援する「IoT大学連携講座」という取り組みが特色となっています。この取り組みは2期目から実施しており、今期で3年目です。
実習で使用する教材は「現場実装できるもの」かつ「ローコードあるいはノンコードな開発環境であること」を条件としており、Raspberry PiやNode-REDなど比較的容易で皆が学習に取り組みやすい技術を選定し、実際に手を動かして習得してもらえるようにしているとのことです。
同講座には、これまでに中小企業58社が受講し、そのうち6割が現場実装を実現しているとのことです。同ラボとしては、さらに現場実装の比率を増やしていこうと奮闘しています。過去の取り組み内容としては、射出成形機の温度管理、冷凍庫の温度管理、作業日報のデジタル化、砂処理設備の稼働回数把握などがありました。
参考:
https://www.iri.pref.shizuoka.jp/wp/wp-content/uploads/2022/11/IRIS_Report_15_2022_overall.pdf
課題を明確に!
大学連携講座を受けて十分な技術知識を付けた参加企業たちが、実際の設備投資(本導入)にたどり着く確率は20~30件のうち1件程度ということです。この理由の1つとして、一緒に導入を進める技術パートナーがうまく見つからないこともあるのだそうです。
そこで静岡県IoT推進ラボが仲介役となってラボ内でも展示している支援企業を紹介したり、企業に依頼するにあたっての案件整理や計画の支援などをしたりしています。
大学連携講座を受講する企業たちの多くが苦労している部分が、「課題の明確化」であると静岡県工業技術研究所 機械電子科の赤堀篤氏は言います。
「まず『自分たちにとっての一番の課題(困りごと)は何か』をはっきりとさせた上で、要件や計画を整理し、協力企業などにもしっかり説明できる状態にしておくことが大事であると、講座では口を酸っぱくして、何度も説明し続けるようにしています」。逆に言うと、そこがうまくいけば、設備投資や本導入はすんなりとうまくいくということなのでした。
しかしながら、半導体不足を背景として、電子部品やPLCなどの調達が不安定な状況が今も続いており、それが現場実装の壁となってしまうことも少なくないとのこと。この活動に限らず、今多くの製造業を悩ますこの問題が、1日でも早く解決されることを願うばかりです。