デジタルの力で「大田区の仲間まわし」を「日本の仲間まわし」に進化させる(大田区IoT推進ラボ)
公開日:
2023年3月23日(木)
閲覧数:291 回
首都圏でも有数の工業地域である大田区には、数人程度の小規模の町工場が多数集まっています。そんな小さな工場が、個別の技術に特化して仕事をすることが多いことから、大田区では「仲間まわし」という独特なネットワークが生まれました。
大田区産業経済部 産業振興課が事務局となる大田区IoT推進ラボでは、昔ながらの仲間まわしをデジタル化して効率化するとともに、大田区はもとより全国の中小製造業をデジタルでつなぐというユニークなコンセプトで、「デジタル受発注プラットフォーム」という仕組みを立ち上げ、2022年8月から運用を開始しました。現時点、参画社数は50社以上に上ります。
仲間まわしは、中小企業にいいことがいっぱい
仲間まわしとは、例えば自分のところでは「切削」作業しかできなくても、「穴あけできる工場」「研磨ができる工場」「アセンブリーに対応できる工場」といったように、近所の工場に得意な工程を担ってもらい、発注された製品を製作して納品していくネットワークのことです。自転車(ちゃりんこ)で回れるほどの距離に仲間の工場があることから、「ちゃりんこネットワーク」と呼ばれることもあるそうです。
また仲間まわしには、案件のとりまとめをするハブ企業がいて、そこがメーカーなどから依頼を受けた後、仲間の工場に割り振っていく体制になっています。そうした受発注の仕組みを、そのままクラウド上のデジタルの世界に持ってきた、いわば「デジタル仲間まわし」ともいえる仕組みがデジタル受発注プラットフォームです。
デジタル受発注プラットフォームは、大田区と大田区産業振興協会、大田区発のプロジェクト型共同事業体であるI-OTA、ITベンダーのテクノアの4者が連携して推進しています。I-OTAは、大田区のハブ企業が集まり、提案型のものづくりにより、高付加価値な案件を呼び込み、大田区製造業の活性化を目指しています。
テクノアは岐阜県の地域未来牽引企業であり、同社が培ってきた中小企業に特化した生産管理システム開発の知見を持ち寄ってくれています。デジタル受発注プラットフォームでは、「プラッとものづくり」というシステムを活用しており、これは、テクノアが開発・運営し、I-OTAが中小製造業の目線で開発協力しました。
大田区内の工場も、ファックスや電話中心のコミュニケーションがいまだに多く、ファックスで送られてきた図面の文字が読めなくて電話で確認するなど、なかなか効率化が進みません。発注者も中小製造業も同じクラウドサービスを利用していれば、正確なデジタルデータを共有することができ、中小製造業の業務が効率化するとともに、発注者の手続きも簡単でスピーディになるというわけです。
また、デジタル受発注プラットフォームの特長のひとつは、参画企業がグループをつくる仕組みがあることです。発注側の企業がデジタル受発注プラットフォームの中で依頼を送信すると、個社からバラバラと回答が来るのではなく、グループ代表と呼ばれるハブ企業が、複数の中小製造業の技術・ノウハウを結集させた提案をします。このとき、ハブ企業は、システムの中で仲間企業たちに仕事を相談していくようになっています。
現状のデジタル受発注プラットフォームの仕組みはあえてシンプルにしています。使い方も簡単にしており、電子メールやインターネット検索を使っていれば問題なく利用できるようになっています。利用するにあたっても、ソフトウェアを買う必要はなく、さらに、原則的にはグループ代表が月額の利用料を支払う仕組みになっています。
またデジタル受発注プラットフォームでは、図面や3Dデータの添付が必須ではありません。そのため、図面を作成中であったり、まだ図面化できないアイデア段階や研究開発段階であったりしても受注を受け付けられるようになっています。そうした仕組みで中小規模の工場が相見積もりやコンペによる理不尽なコストダウン競争から逃れることができ、「提案型ものづくり」「試作・研究開発」といった利益率が高くてやりがいある仕事が受けられるようになります。
この仕組みは大田区に閉ざすのではなく、全国展開しようとしていることがとても重要であり、「大田区の仲間まわし」から「日本の仲間まわし」に進化させようとしています。現状では大田区企業を中心に推進していますが、2023年から、全国の企業が参画できるようになるとのことです。
デジタル受発注プラットフォームについて、展示会やプレスリリースなどで情報を発信したことで、全国の産業集積地、企業団体、金融機関などから多数の問い合わせ、参画・協力希望が寄せられているといいます。今後は、全国の製造業集積地への展開、拡大のために、IoT推進ラボ、産業のまちネットワークなどでつながりのある自治体へのアプローチを実施していくということです。
全国の企業とデジタルでつながることは、BCPの観点でも、企業同士が支え合いながら仕事ができるメリットがあると思っています。
全国の強靭な中小企業がつながる力
新型コロナ問題やウクライナ問題、半導体など部品調達の混乱など、世界的な情勢変化の影響を受け、想定していた大企業などからの発注獲得が遅れて、今も苦労しているといいます。引き続き、発注獲得に向けた取り組みを強化していきたいということです。
「デジタル受発注プラットフォームはまだ完成ではなく、今も区内の企業さんと議論しながら作りこんでいる最中です。しかし、目指すべきところは間違っていないという自信があります。全国の中小企業の仕事がワンストップになることで、発注側の大手企業も利便性が高まると思っています」と語るのは大田区産業経済部 産業振興課の荒井大悟氏です。
また、世界的な部品調達の混乱を受け、国内生産に回帰しようという動きも見られます。しかし、かつての企業城下町の集積が弱まる中、大手企業からは「今の国内で、海外と同じことが本当にできるのか」という声も聞こえてくることがあるそうです。しかし、荒井氏も工代氏も、デジタルの力で全国の企業が一丸となることで、大手企業の国内生産を支えることが出来ると信じています。そして、将来的には、海外からの受注を取り込むプラットフォームへの発展を目指しています。
「全国の強靭な中小企業がデジタル受発注プラットフォームでつながれば、日本の製造業を支える大きな力を発揮できると思います。全国の中小企業、大手企業、スタートアップ、産業支援機関のみなさんと共に挑戦・成長していきたいと考えておりますので、是非ご参画ください!」(荒井氏)。
大田区産業経済部 産業振興課が事務局となる大田区IoT推進ラボでは、昔ながらの仲間まわしをデジタル化して効率化するとともに、大田区はもとより全国の中小製造業をデジタルでつなぐというユニークなコンセプトで、「デジタル受発注プラットフォーム」という仕組みを立ち上げ、2022年8月から運用を開始しました。現時点、参画社数は50社以上に上ります。
仲間まわしは、中小企業にいいことがいっぱい
仲間まわしとは、例えば自分のところでは「切削」作業しかできなくても、「穴あけできる工場」「研磨ができる工場」「アセンブリーに対応できる工場」といったように、近所の工場に得意な工程を担ってもらい、発注された製品を製作して納品していくネットワークのことです。自転車(ちゃりんこ)で回れるほどの距離に仲間の工場があることから、「ちゃりんこネットワーク」と呼ばれることもあるそうです。
また仲間まわしには、案件のとりまとめをするハブ企業がいて、そこがメーカーなどから依頼を受けた後、仲間の工場に割り振っていく体制になっています。そうした受発注の仕組みを、そのままクラウド上のデジタルの世界に持ってきた、いわば「デジタル仲間まわし」ともいえる仕組みがデジタル受発注プラットフォームです。
デジタル受発注プラットフォームは、大田区と大田区産業振興協会、大田区発のプロジェクト型共同事業体であるI-OTA、ITベンダーのテクノアの4者が連携して推進しています。I-OTAは、大田区のハブ企業が集まり、提案型のものづくりにより、高付加価値な案件を呼び込み、大田区製造業の活性化を目指しています。
テクノアは岐阜県の地域未来牽引企業であり、同社が培ってきた中小企業に特化した生産管理システム開発の知見を持ち寄ってくれています。デジタル受発注プラットフォームでは、「プラッとものづくり」というシステムを活用しており、これは、テクノアが開発・運営し、I-OTAが中小製造業の目線で開発協力しました。
大田区内の工場も、ファックスや電話中心のコミュニケーションがいまだに多く、ファックスで送られてきた図面の文字が読めなくて電話で確認するなど、なかなか効率化が進みません。発注者も中小製造業も同じクラウドサービスを利用していれば、正確なデジタルデータを共有することができ、中小製造業の業務が効率化するとともに、発注者の手続きも簡単でスピーディになるというわけです。
また、デジタル受発注プラットフォームの特長のひとつは、参画企業がグループをつくる仕組みがあることです。発注側の企業がデジタル受発注プラットフォームの中で依頼を送信すると、個社からバラバラと回答が来るのではなく、グループ代表と呼ばれるハブ企業が、複数の中小製造業の技術・ノウハウを結集させた提案をします。このとき、ハブ企業は、システムの中で仲間企業たちに仕事を相談していくようになっています。
現状のデジタル受発注プラットフォームの仕組みはあえてシンプルにしています。使い方も簡単にしており、電子メールやインターネット検索を使っていれば問題なく利用できるようになっています。利用するにあたっても、ソフトウェアを買う必要はなく、さらに、原則的にはグループ代表が月額の利用料を支払う仕組みになっています。
またデジタル受発注プラットフォームでは、図面や3Dデータの添付が必須ではありません。そのため、図面を作成中であったり、まだ図面化できないアイデア段階や研究開発段階であったりしても受注を受け付けられるようになっています。そうした仕組みで中小規模の工場が相見積もりやコンペによる理不尽なコストダウン競争から逃れることができ、「提案型ものづくり」「試作・研究開発」といった利益率が高くてやりがいある仕事が受けられるようになります。
この仕組みは大田区に閉ざすのではなく、全国展開しようとしていることがとても重要であり、「大田区の仲間まわし」から「日本の仲間まわし」に進化させようとしています。現状では大田区企業を中心に推進していますが、2023年から、全国の企業が参画できるようになるとのことです。
デジタル受発注プラットフォームについて、展示会やプレスリリースなどで情報を発信したことで、全国の産業集積地、企業団体、金融機関などから多数の問い合わせ、参画・協力希望が寄せられているといいます。今後は、全国の製造業集積地への展開、拡大のために、IoT推進ラボ、産業のまちネットワークなどでつながりのある自治体へのアプローチを実施していくということです。
全国の企業とデジタルでつながることは、BCPの観点でも、企業同士が支え合いながら仕事ができるメリットがあると思っています。
全国の強靭な中小企業がつながる力
新型コロナ問題やウクライナ問題、半導体など部品調達の混乱など、世界的な情勢変化の影響を受け、想定していた大企業などからの発注獲得が遅れて、今も苦労しているといいます。引き続き、発注獲得に向けた取り組みを強化していきたいということです。
「デジタル受発注プラットフォームはまだ完成ではなく、今も区内の企業さんと議論しながら作りこんでいる最中です。しかし、目指すべきところは間違っていないという自信があります。全国の中小企業の仕事がワンストップになることで、発注側の大手企業も利便性が高まると思っています」と語るのは大田区産業経済部 産業振興課の荒井大悟氏です。
また、世界的な部品調達の混乱を受け、国内生産に回帰しようという動きも見られます。しかし、かつての企業城下町の集積が弱まる中、大手企業からは「今の国内で、海外と同じことが本当にできるのか」という声も聞こえてくることがあるそうです。しかし、荒井氏も工代氏も、デジタルの力で全国の企業が一丸となることで、大手企業の国内生産を支えることが出来ると信じています。そして、将来的には、海外からの受注を取り込むプラットフォームへの発展を目指しています。
「全国の強靭な中小企業がデジタル受発注プラットフォームでつながれば、日本の製造業を支える大きな力を発揮できると思います。全国の中小企業、大手企業、スタートアップ、産業支援機関のみなさんと共に挑戦・成長していきたいと考えておりますので、是非ご参画ください!」(荒井氏)。