中小企業DX支援「意識を高め、人を育て、実践を支援し、成果を広める」で事例創出――北九州市DX推進ラボ

4ステップの伴走型DX支援で戦略的に

北九州市 産業経済局 未来産業推進部 未来産業推進課と公益財団法人北九州産業学術推進機構(以下FAIS)が事務局を担う、北九州市DX推進ラボは2020年より活動を開始。北九州市内中小企業のDX推進を支援し、事業変革や労働生産性向上を実現させることを目指しています。また令和9年度までに「DX推進企業500社創出」を目標として掲げます。DX推進事業では、北九州市ロボット・DX推進センター※1および北九州市DX推進プラットフォーム※2を中心として、「機運醸成」「準備」「実践」「事業変革」という4ステップを設け、一気通貫した伴走型支援を特色としています。

北九州市ロボット・DX推進センター

※1 北九州市ロボット・DX推進センター:北九州市内企業のロボット導入・DX推進に向けた支援を加速させるために、令和4年度に開設。主に「導入支援」「操作体験」「人材育成」「集いの場」の機能を有し、産学官金のハブとして様々な支援を実施している。https://www.ksrp.or.jp/robo-dx/
※2 北九州市DX推進プラットフォーム:DXを推進したい北九州市内企業等(ユーザー会員)とそれをサポートできる企業等(サポート会員)を結び付けるためのプラットフォーム。令和6年1月末時点でユーザー会員296社、サポート会員202社が参加。https://ktq-dx-platform.my.site.com/DXmain/s/
 

機運醸成――事例やデモ展示でDXの意欲を喚起

「機運醸成」での重要な活動の1つが、「課題解決EXPO」の構成展示会「西日本DX推進フェア」(会場:西日本総合展示場/北九州市)の開催です。第2回である2023年7月開催の西日本DX推進フェアでは、AIやビッグデータ、クラウド、ブロックチェーン、ウェアラブルデバイス、バーチャルリアリティ(XR:AR/VR/MR)などによるさまざまな業務用DXシステム、環境対応関連システム(GXシステム)といったITソリューション関連を中心に約50社が出展。来場者は会期3日間の合計で1万8000人に上りました。この展示会の中では、北九州市内でDXに取り組む企業によるディスカッションや事例発表も実施しています。


西日本DX推進フェア

 

さらに北九州市 ロボット・DX推進センターを活用した機運醸成にも取り組んでいます。同センターでは、AIやIoTシステム、カメラやセンサー、ロボットといったITツールを活用した工場ラインを想定したデモ設備などの展示を行っています。
また、生産性向上等に寄与する製品やサービスを持つ企業と連携し、実際に操作体験等を行い、自社の業務改善を行うきっかけとしていただく「提携セミナー」も実施しています。

デモ展示(IoT、ロボット)

準備――現場から経営者までスクールを充実

「準備」のフェーズでは、いよいよDXに取り組もうとしている企業が必要とする人材育成支援やDXに関する相談対応を行っています。スクールの事業は、「経営層向け」「管理者層向け」「現場リーダー向け」と受講対象を3階層に分けて展開しています。また、個別の企業に対する伴走支援も「ワンストップ相談窓口」で実施。デジタル化の第一歩を踏み出す段階から、DXに向けて社内の課題を洗い出しロードマップを描き、実際に取り組む際の支援まで幅広くサポートしています。

エグゼクティブビジネススクール

実践――DX実践の費用を支援

「実践」は、北九州市独自の補助金制度の実施や、モデル企業の創出を目指すフェーズです。このフェーズの要となる「DX推進補助金(DXモデル育成枠・DXモデル枠・デジタル化枠)」では、「生産性向上・業務効率化」「業態変革」「新ビジネス創出」といったことを目的としてデジタル技術を活用する事業へ費用の補助を実施。申請枠には、「モデル枠」という事業変革や全体最適に資する取組(デジタルトランスフォーメーション)を対象とする枠(1件当たり最大500万円)に加え、「モデル育成枠」という全体最適に向けた個別最適に資する取組(デジタライゼーション)を対象とした枠(1件当たり最大200万円)が設けられています。「デジタル化枠」ではデジタルツールやデジタル機器を用いた業務効率化(デジタイゼーション)を対象とします(1件当たり最大80万円)。なお「準備」のフェーズの経営層向けスクールは有償となりますが、その費用にDX推進補助金をあてることが可能になっています。

このDX推進補助金はDXを実践する企業だけではなく、DX実践企業にソリューションやツールを提供する企業も対象とする「サポート枠」というものもあります(1件当たり最大500万円)。さらに北九州市内に限定せず、全国が応募対象エリアであることも特色です。 

事業変革――DXの成果を称え、そして知ってもらう

「事業変革」では、北九州地域の中小企業のDX推進事業の素晴らしい成果をたたえ、それを広くモデルとして展開することで取り組みを知ってもらい、次なる事業変革企業の創出を目的とする「北九州DX大賞」を実施しています。

北九州DX大賞表彰式

北九州市内の企業を対象に一般公募。応募対象の事例は、「DX」というからには、デジタル化の対応、あるいはそれによる業務改善だけにとどまらず、ビジョンやビジネスモデルをもって事業の改革や革新につながっていなければならないことが条件です。

令和5年度(2023年度)の「グランプリ」受賞企業は、北九州市八幡西区に本社を置く株式会社西原商事ホールディングスでした。自社の廃棄物処理事業の事務処理や収集運搬などの効率化を図るべくDXに取り組み廃棄物情報管理システムを開発、全国の同業他社にもサービスとして展開したほか、若手社員の提案を元に粗大ごみ回収依頼サービスも全国展開。直近ではいわゆる2024年問題にも対応すべく運行管理システムも開発し、その中では収集運搬車両の二酸化炭素排出量を可視化することもできる機能を有するなどGX(グリーントランスフォーメーション)にも挑戦。時代の潮流に対応した事業の変革を続けていることが受賞の決め手に。行政の事業許可が必要な廃棄物処理業のビジネスは拠点地域に縛られがちであったという課題を乗り越え、さらに産業廃棄物処理業の業界改革にもつなげました。

デジタル化にとどまらない事業変革「DX」推進が課題

北九州市では、以前から中小企業におけるデジタル化やDXへの取り組みの遅れが懸念されており、機運の醸成が喫緊の課題でした。その一方で、コロナ禍で、テレワークのサポート需要や国内におけるDX機運の高まりがあって、デジタル化にとどまらず事業変革(すなわちDX)に至るための支援方法の確立も重要な課題となりました。

また北九州市やFAISの推進チームがリーチできている企業のうち4割が製造業。それ以外の卸・小売業や建設業など市内の多数派業種への支援を広げなければなりません。さらに北九市内には自社でソリューション(オリジナル商品)を持つIT企業も少ないため、地場のソリューションベンダー育成や市外からの誘致も必要でした。

市内DX企業が少しずつ登場、自治体としてもDX関連賞を獲得

2020年~2023年(カレンダー年)までの間で、ワンストップ相談窓口では300件以上の相談対応を実施しました。また同期間では、150件以上の補助制度などによるデジタル化・DXに向けた後押しも実現させています。

自治体としてもDX関連でいくつか受賞。日経デジタルフォーラム・自治体DX白書「第1回日経自治体DXアワード」では「大賞」、内閣官房「令和4年度夏のDigi田(でじでん)甲子園」では「実装部門 内閣総理大臣賞・優勝」となりました。さらに経済産業省が全国の中小企業のDX優良事例を選定する「DXセレクション」では、3年連続で北九州市の企業が受賞するという快挙です。

この取り組みを引き続き強化

北九州市DX推進ラボでは今後も、地域全体のデジタル化・DX推進と共に地域内でのデジタル産業の創出に向けた取り組みを促進していくことと、事業変革に向けた支援強化を続けていきます。支援活動で連携する金融機関はさらに拡大したいところであるそうです。

またこれまで取り組まれてきた地域内のデジタル化・DXモデル事例の広報をより強化していくことが課題です。SNSやWebサイトの活用も工夫していくということでした。
 

 


北九州市DX推進ラボでは、北九州市ロボット・DX推進センターや北九州市DX推進プラットフォーム等各種の取り組みを通じ、市内企業のデジタル化・DXに対する機運を醸成し、切れ目のない生産性向上・事業変革支援に寄与してまいります。

問い合わせ先
北九州市 産業経済局 未来産業推進部 未来産業推進課
Tel:093-582-2905 Mail:san-mirai@city.kitakyushu.lg.jp
 

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