滝沢市を「ITのまち」に育てる、「自分たちでやっちゃえ」の心

滝沢市は、標高2038メートルの秀峰・岩手山のふもとに位置する都市であり、稲、野菜、酪農などを主体とした都市近郊農業が栄えてきました。一方、製造業やIT企業については、お隣にある県庁所在地の盛岡市内に集中しており、滝沢市内に居住する人たちの多くも盛岡市内の企業に出勤していました。

滝沢市では市内での産業活性および人材活用などを目指し、2009年(平成21年)度から「岩手県内最大級のIT関連産業の集積」を掲げて、滝沢市IPUイノベーションセンター・パークを整備し、岩手県や岩手県立大学と連携して企業誘致を行ってきました。取り組みをスタートして約10年が経過した現在、イノベーション パークには4社、イノベーションセンターには26社のIT企業が入居し、着々と企業立地が進行しています。
 
岩手山とパーク周辺
 
滝沢市IoT推進ラボは、滝沢市と岩手県立大学を軸とした関係機関との連携による、各企業間マッチング機会の提供、産学官実証実験、子ども向けIoT技術力の向上に向けた各セミナーの開催、産学官連携による地域課題解決などに取り組んでいます。

地域課題を解決するアイデア創出イベントで、企業と学生の交流の場を醸成する

滝沢市近隣には、東北最大級のIT教育機関を誇る岩手県立大学ソフトウェア情報学部と、岩手大学理工学部があり、そこで先端のITを学ぶ学生たちがたくさんいます。しかしながら、その卒業生の多くが市外や県外の大きな都市部にある企業を志望し、就職していくそうです。
 
そうした背景から、イノベーションセンターおよびパークの同施設への入居企業でも、人材の確保や定着に悩んできたといいます。その理由について、「企業と大学との交流が非常に少なかったことが大きい」と、滝沢市 経済産業部企業振興課の宮田聖子 氏は述べています。滝沢市の近隣にいる学生の間では、「滝沢市にも優れたIT企業がある」という認知度が依然として 低く、企業内にOBがいなければOB訪問も成り立たたず、交流の機会が非常に持ちづらい状況であったのです。
 
そこで、イノベーションセンターでは、企業と大学が交流する機会を創出し、ひいては学生たちに滝沢市のIT企業のことを知ってもらうこと、また、コミュニティを醸成することを目的として、2020年度から「Takizawa innovation challenge 」を開催しています。このイベントでは、まず滝沢市近隣在住の大学生などから、ビジネスの種となるプロジェクトアイデアを約1か月半の間に募集。選考通過して採択されたアイデアはイノベーションセンターおよびパークに居住するIT企業が一緒になって具現化を進めていくという取り組みです。このイベントを開催することで、学生たちがイノベーションセンターに足を運んでもらう機会を増やして、企業と学生の接触を増やすことを狙っています。

2年目である「Takizawa innovation challenge 2021」では、「DO IT OURSELVES/自分たちでやっちゃえ」をテーマに、地域課題や身の回りの不便を解決する商品やサービス、動画配信サービスなど、少人数で実現可能なプロジェクトを募集しました。今回は4つのアイデアが採択され、2021年12月に最終発表をして、オンライン配信も実施しました。
Takizawa innovation challenge   2020
 
今回、採択されたプロジェクトは、「学生向け学習動画推薦システム『AIDI』」「eスポーツプロジェクト『PROJECT e WATE』」「学内限定&仲介専用マッチングサービス『iMatch』」「滝沢市の魅力を再発見するプロジェクト」。これらのプロジェクトそれぞれに、活動支援金15万円が贈られました。

コロナ禍でのコミュニケーションをどうしたらいいの?

Takizawa innovation challenge は、企画が始まった頃には想定していなかった新型コロナウイルス問題が急速に深刻になってきた中でスタートしたプロジェクトです。初回のテーマも、「新型コロナウイルス感染拡大に伴うNew Normal(新しい生活様式)」になりました。
 
コロナ対策では、人の接触を避けることが基本である一方、プロジェクトの目的は「イノベーションセンターに足を運んでもらうことで、学生と企業との交流機会を作ること」。状況と相反してしまう目的をどうかなえるのかが悩ましいと宮田氏は言います。

まず実地開催想定の発表会は2回ともオンライン中継が行われました。オンラインイベントに慣れたIT企業でもあるDMM.comの力を借りて開催し、さらにプレスリリースもそこで打ってもらって、メディアにも取り上げられたので、周知という狙いで成功しています。1回目、2回目と回を重ねて、参加学生も増えたということです。
オンラインの様子
 
問題は、採択プロジェクトが進められる中での、学生と企業との打ち合わせなどのコミュニケーションでした。もちろん対面で会うことは難しい状況であり、それぞれのプロジェクトチームはSNSを用いてやり取りしていました。よく知らないもの同士のSNS中心のコミュニケーションとなったからか、プロジェクトごとで、そのかかわりの量に差が出てしまったということです。中には、双方で1回のコミュニケーションを取ったのみで、ほぼ学生だけで最後までプロジェクトを進行してしまったケースもあったとか。

「SNSのコミュニケーションが枷(かせ)になったこともあるのでしょうが、検討していたプロジェクトの内容が、どのくらい企業の手を借りる必要があるのかが左右したなど、さまざまな要因がからんでいたと思います。企業も、学生とコミュニケーションが取りたくて参加しているため、なんとか解消せねばと思います」(宮田氏)。
 
オンラインでの体験提供は、もちろん優れた面もたくさんあり、発表会もオンライン配信されることで、滝沢市 以外に住む人の目に触れるきっかけとなりました 。しかし、やはりそれも万能とは言えず、実地とオンラインの両方でのコミュニケーションが望ましいのかもしれません。

そうしたコロナ禍の課題はあるものの、学生たちは、ワークショップで「アイデアの出し方」を学び、さらに自分たちで考えたアイデアをイノベーションチャレンジで「カタチ」にするという経験をして、学生と企業とのコミュニティは確実に作られてきているということです。「学生からも『やってよかった!』『滝沢市のIT企業について知るよいきっかけになった』という声がありました」(宮田氏)

今後は、県外の企業の力を借りずとも、滝沢市近隣の企業が中心となってTakizawa innovation challenge のようなイベントを実施できる体制を作ることを目指し、同地域の学生や企業、関連機関が、まさに「自分たちでやっちゃえ」という気持ちで、自発的に 「実学実践」を行っていく場へと成長させていくことを目指しているということです。
 

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