仙北市名産「空飛ぶ西明寺栗」誕生か!? 地域ビジネス創成のためのドローン実験

秋田県の東部、内陸部に位置する仙北市。同市の土地面積1,093.56平方キロメートルのうち、約8割が林野で占められており、市の中央には日本一深い湖である田沢湖があります。同市は、農業や観光業が基幹産業になっています。秋田県のお米「あきたこまち」の産地であるとともに、「日本一のサイズ」を誇る、乳児の握りこぶしほどの大きさになる特大栗「西明寺栗」の産地としても知られています。
 
仙北市では、2015年(平成27年)に「国家戦略特区」(地方創生特区および近未来技術実証特区)に認定されて以来、ITを活用した地域課題の解消に取り組んできました。2018 年(平成30年)には「SDGs未来都市」、2019年(令和元年)には「国交省スマートシティモデル事業」「内閣府近未来技術等社会実装事業」にも選定されています。
 
「国家戦略特区に応募する前、農林や医療など、さまざまな分野で課題があり、その課題を解決するためには、規制緩和が必要でした」と話すのは、仙北市IoT推進ラボを運営する、仙北市総務部地方創生・総合戦略室の明平英晃氏です。
 
前述のとおり、仙北市の広大な面積の約8割が林野であり、更にその約6割は国有です。民有林を活用した林業も盛んですが、簡単には手を付けられない国有林野の活用は、仙北市のかねてからの課題でもありました。

国家戦略特区は、規制緩和によってビジネスを展開しやすい環境をつくる制度であるため、市域の大半を占める「国の持ち物」をビジネスに活用するという仙北市の提案は、制度の趣旨に合致していたようです。
 
仙北市は、少子高齢化や生産人口減少に悩まされており、農業においても従事者の高齢化や人手不足への対処が課題となっています。そこで、仙北市IoT推進ラボでは、農業でドローンを有効活用することによる業務の効率化や省人化、新たなビジネスモデル創出などを目指しています。

西明寺栗を空からドローンで運ぶ

仙北市IoT推進ラボの事業推進や実証実験で常に意識しているのは、「社会実装のイメージを明確にすること」です。2020年11月26-27日に実施した実証実験では、⻄明寺栗の加⼯品(商品)を、⽣産加⼯所から販売所まで約4kmの距離をドローンで10分ほどかけて運搬しました。
運搬される⻄明寺栗
 
実証実験では、輸送商品やルートを将来的な社会実装を想定して選定するとともに、シール型の電子タグ(RFタグ)による商品管理システムの運用も実証しました。また、晴天時および⾬天時の⾶⾏結果を⽐較し、輸送の実務で想定される天候の影響の検証も行いました。
 
「仙北市内では、特区選定当初から、ドローンのスピードレースや空撮映像コンテストなどを開催しており、市民にとっても身近な存在になりつつありました。一方、市民の生活や仕事に一体、どのように役立つのかについて認知が足りていないとも感じていました。そこで、基幹産業である農業分野でのドローンの活用に着目し、農薬散布ドローンの普及推進と併せて今回の実証実験プロジェクトを開始しました」(明平氏)。
 
近年、仙北市のほか、全国各地で農業におけるドローンの実運⽤が広がっていますが、主に農薬散布で活用されています。仙北市では、ドローンの新たな活⽤法として農産物輸送の可能性を模索しています。

実運用を想定した実験や、許認可の効率化

実証実験において、ドローンの飛行は、天候の影響を受けることなく、安定していました。⾬天時は風による⾶⾏遅延や機体傾きがあるものの、いずれも軽微なものにとどまり、実運⽤には影響ないと分かりました。「ドローンによる荷物の運搬自体は、既に実証や活用が進んでおり、技術的な難易度はそれほど高いものではありません」(明平氏)。
 
しかしながら、「ドローンを飛行させる上での許認可手続きをいかに効率よく行うか、飛行中の安全をいかに確保するかなどが課題になりました」と明平氏は言います。実証実験では、県管理の一級河川の桧木内川の上空や、仙北市が管轄となる市道の上空を飛ばすなど、許認可関連の手続き関連を極力少なくするとともに、万が一、事故や落下物があったとしても被害が最小限になるよう配慮しました。
離陸直後の様子
 
今回の実証実験では、参加した関係者らから、ポジティブな反応が得られました。RFタグによる商品管理についても、簡単で楽であるとの声もあがりました。
 
この実証実験にあたっては、現場の人たちにメリットを感じてもらうにはどうしたらよいかを熟慮したといいます。「ドローンで商品を運ぶ」ということ自体は、消費者にとっても、生産者や販売店の人たちにとっても、劇的なメリットがあるわけではなく、それができなくても何ら困ることはありません。商品がこれまでと比べて安くなるわけでもなく、従来のクルマでの運搬とほぼ同じくらいの時間をかけて少量の商品しか運べません。
 
だからこそ、ドローン配送の実現のためには、「空飛ぶ西明寺栗」のようなブランドによる高付加価値化、自動配送による省人化、天候に左右されない安定したサービス提供およびRFタグ導入による出荷業務効率化をメリットとして捉えられるかがポイントになります。
運搬中の様子

農業の現場での実運用を目指して

実運用に向けての一番の課題は、導入などにかかるコストです。そのための 施策のひとつとして、既に農家が所有するドローンに着目しています。「農業用ドローンは1台当たり周辺機器を含めて300万円くらいかかります。このドローンを遊休時に運搬等で活用できれば、経費の削減につながると考えます」(明平氏)。
 
これから、農産物や商品を運搬するドローンの実運用に向けて、⾶⾏できる天候条件の設定検討、無⼈運⽤の検討、運搬の高速化、業務への実装時における経済性向上および省⼒化の実現といった数々の課題があるため、今後も関係法令の整備と連動した継続的な実証実験を重ねていくそうです。
 
 

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