町工場がIoTを使ったら新事業誕生! 『楽しく・楽に・もうかる』IoTをめざす!
公開日:
2022年3月18日(金)
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「商いの町」である大阪は、阪神工業地帯を中心として活性する「製造業の町」でもあります。大阪府内の各所に金属加工や樹脂成形など、素晴らしい技術を持つ中小企業、いわゆる町工場もたくさんあります。
大阪府IoT推進ラボでは、町工場におけるITやIoT活用促進やDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めるため、補助金などの支援と併せ、「IoT診断」「IoTマッチング」といったサービスや、DX企業の情報発信などを行っています。
「大阪の町工場にITやIoT活用、そしてDXへの取り組みをどんどん進めてもらい、『楽しく楽(らく)にもうけていただく』ことで地域経済の浮揚を目指しています」と、大阪府IoT推進ラボを運営する、大阪産業局の辻野一郎氏は言います。
同ラボでは、IoT診断で大阪府中小企業診断協会に所属するIT分野に強い中小企業診断士が現場を訪問し、それぞれの現場が取り組みやすいIT化やDXのプランを提案。これまで60社が利用し、そのうち10社以上で、IoTシステムの導入やデジタル化を成功に導いているということです。
同社Webサイトを覗いてみると、「新事業」の文字が。どうも、これは打ち抜き加工関係ではないようです。実はこれ、大阪府IoT推進ラボによる支援の1つの成果なのです。さて、この新事業とは、一体、何なのでしょうか――
それは、サンコー技研が抱えていた業務課題への取り組みからスタートしています。
社会がスマートになり、市場が複雑化してくると、顧客の要求はどんどん厳しくなり、スピード感も増していくものです。そのような中、サンコー技研でも、業務効率化や生産性向上が課題となっていました。
同社では、作業日報に、生産実績やトラブル、その原因などを記載していました。また、記録は全て手書きで行われていました。まず、手書きであることが、日々多忙な業務の中で負担になっていました。さらに、トラブルが生じた際などに過去の情報を振り返る際には手書きの日報の中身を1つ1つ見ていくしかありませんでした。手書きの情報では、時間が経過するたび、そして担当が代替わりしていくたび、どんどん埋もれていってしまいます。
製造業向けの生産管理ツールは既にたくさん登場しています。同社でも「業務管理をデジタル化すればよい」という考えに至り、さまざまなソフトウェアを検討します。しかしながら、なかなか「これは」という仕組みが見つからなかったといいます。
そこで、大阪府IoT推進ラボに相談があったということで、まずIoT診断で課題を絞り込んでいました。そして、「よいシステムがないなら、自分たちで作るしかないか」と、IoTマッチングで一緒に課題解決をしてくれそうな企業を選定していきました。
そこで縁がつながったのが、大阪市淀川区のIT企業、サン・エンジニアリングでした。この企業は、制御システムや組み込みソフトウェアなど製造業向けのシステム開発の経験・知見が豊富であったことと併せ、モバイルアプリ開発も得意でした。
そして、サンコー技研とサン・エンジニアリングが協働で技術要件を絞り込んで、その結果として生まれたのが、工場の日報を付けるだけの、シンプルなモバイルアプリでした。情報管理にはQRコードを併用するようにしましたが、最近のスマートフォンやタブレット端末にはカメラによる読み取り機能が標準で備わっているため、読み取り機器などの機材の用意は要りません。また、PCの操作が苦手な人でも、直感的な操作ができるモバイルアプリなら、すぐ操作を覚えて簡単に使うことができ、特別な研修も不要です。
また、モバイルアプリに振り切ったことが、システム開発側にとっても、開発期間短縮などのメリットがあったと辻野氏は説明します。
サンコー技研は、手書きで行っていた日報作成を、簡単なモバイル端末での入力に置き換えただけで、幅広い業務改善が実現できました。記録業務の手間削減や記録ミス削減が実現できたことと併せ、記録のトレーサビリティの確保、工程ごとの正確な時間管理が可能になりました。また、社内の全員が同じ実績データをいつでも見られるようになったため、誰もが社内の工程全体を見渡せるようになり、自発的な作業改善が促進されて生産性向上につながっているということです。
さらにこれを「スマファク!」と名付け、2020年4月から外販も開始。これが、サンコー技研の新事業となったのです。さらに協業したサン・エンジニアリングにとっても、これが新サービスになりました。「町工場がつくった町工場の日報見える化アプリ」というキャッチフレーズで売り出され、当初の狙いだった中小規模の町工場だけではなく、大手企業からの引き合いもあるということです。
サンコー技研とサン・エンジニアリングのスマファク!は、「IoT診断」による課題抽出と、「IoTマッチング」による企業マッチングの分かりやすい成功事例となり、後に続く大阪府の町工場IoTのお手本としての役割も担っています。
「この事例のように、今後も個々の現場に寄り添いながら、ユーザーニーズにかなう助言・提案をしていき、DX先進企業の情報などもたくさん収集し続けて、それをよりよい支援へつなげていきます」(辻野氏)。
大阪府IoT推進ラボでは、町工場におけるITやIoT活用促進やDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めるため、補助金などの支援と併せ、「IoT診断」「IoTマッチング」といったサービスや、DX企業の情報発信などを行っています。
「大阪の町工場にITやIoT活用、そしてDXへの取り組みをどんどん進めてもらい、『楽しく楽(らく)にもうけていただく』ことで地域経済の浮揚を目指しています」と、大阪府IoT推進ラボを運営する、大阪産業局の辻野一郎氏は言います。
同ラボでは、IoT診断で大阪府中小企業診断協会に所属するIT分野に強い中小企業診断士が現場を訪問し、それぞれの現場が取り組みやすいIT化やDXのプランを提案。これまで60社が利用し、そのうち10社以上で、IoTシステムの導入やデジタル化を成功に導いているということです。
作業日報の機能だけでええのに
東大阪市サンコー技研は、金型やプレス加工、トムソンなど打ち抜き系の精密加工を得意とする企業であり、プリント基板や光学部品、フィルム部材などを製作しています。同社Webサイトを覗いてみると、「新事業」の文字が。どうも、これは打ち抜き加工関係ではないようです。実はこれ、大阪府IoT推進ラボによる支援の1つの成果なのです。さて、この新事業とは、一体、何なのでしょうか――
それは、サンコー技研が抱えていた業務課題への取り組みからスタートしています。
モバイルアプリを使用している様子
社会がスマートになり、市場が複雑化してくると、顧客の要求はどんどん厳しくなり、スピード感も増していくものです。そのような中、サンコー技研でも、業務効率化や生産性向上が課題となっていました。
同社では、作業日報に、生産実績やトラブル、その原因などを記載していました。また、記録は全て手書きで行われていました。まず、手書きであることが、日々多忙な業務の中で負担になっていました。さらに、トラブルが生じた際などに過去の情報を振り返る際には手書きの日報の中身を1つ1つ見ていくしかありませんでした。手書きの情報では、時間が経過するたび、そして担当が代替わりしていくたび、どんどん埋もれていってしまいます。
製造業向けの生産管理ツールは既にたくさん登場しています。同社でも「業務管理をデジタル化すればよい」という考えに至り、さまざまなソフトウェアを検討します。しかしながら、なかなか「これは」という仕組みが見つからなかったといいます。
それなら、自分らで作ろう!
「サンコー技研さんは、作業日報をデジタル化さえできたら、それで十分であると考えていたのですが、そこに特化したような、手軽な既存システムが見あたらなかったのです」(辻野氏)。既存の生産管理システムは、サンコー技研にとってライセンスコストの負担が大きい上、必要がない機能まで含んだオーバースペックなシステムばかりであったといいます。そこで、大阪府IoT推進ラボに相談があったということで、まずIoT診断で課題を絞り込んでいました。そして、「よいシステムがないなら、自分たちで作るしかないか」と、IoTマッチングで一緒に課題解決をしてくれそうな企業を選定していきました。
そこで縁がつながったのが、大阪市淀川区のIT企業、サン・エンジニアリングでした。この企業は、制御システムや組み込みソフトウェアなど製造業向けのシステム開発の経験・知見が豊富であったことと併せ、モバイルアプリ開発も得意でした。
そして、サンコー技研とサン・エンジニアリングが協働で技術要件を絞り込んで、その結果として生まれたのが、工場の日報を付けるだけの、シンプルなモバイルアプリでした。情報管理にはQRコードを併用するようにしましたが、最近のスマートフォンやタブレット端末にはカメラによる読み取り機能が標準で備わっているため、読み取り機器などの機材の用意は要りません。また、PCの操作が苦手な人でも、直感的な操作ができるモバイルアプリなら、すぐ操作を覚えて簡単に使うことができ、特別な研修も不要です。
モバイルアプリを使用している記録
また、モバイルアプリに振り切ったことが、システム開発側にとっても、開発期間短縮などのメリットがあったと辻野氏は説明します。
サンコー技研は、手書きで行っていた日報作成を、簡単なモバイル端末での入力に置き換えただけで、幅広い業務改善が実現できました。記録業務の手間削減や記録ミス削減が実現できたことと併せ、記録のトレーサビリティの確保、工程ごとの正確な時間管理が可能になりました。また、社内の全員が同じ実績データをいつでも見られるようになったため、誰もが社内の工程全体を見渡せるようになり、自発的な作業改善が促進されて生産性向上につながっているということです。
さらにこれを「スマファク!」と名付け、2020年4月から外販も開始。これが、サンコー技研の新事業となったのです。さらに協業したサン・エンジニアリングにとっても、これが新サービスになりました。「町工場がつくった町工場の日報見える化アプリ」というキャッチフレーズで売り出され、当初の狙いだった中小規模の町工場だけではなく、大手企業からの引き合いもあるということです。
サンコー技研とサン・エンジニアリングのスマファク!は、「IoT診断」による課題抽出と、「IoTマッチング」による企業マッチングの分かりやすい成功事例となり、後に続く大阪府の町工場IoTのお手本としての役割も担っています。
「この事例のように、今後も個々の現場に寄り添いながら、ユーザーニーズにかなう助言・提案をしていき、DX先進企業の情報などもたくさん収集し続けて、それをよりよい支援へつなげていきます」(辻野氏)。