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企業の対話で課題を聞いて事例創出、さらに公開事例で後に続く企業を刺激

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神戸市は、兵庫県の港湾都市という特徴から臨海部を中心とした重厚長大産業や地場産業など、ものづくり産業とともに発展してきました。そのため、高い技術力を持つ中小ものづくり企業が多く存在しています。

近年では、先端医療をはじめ、航空機、ロボット、水素など次世代産業の集積をすすめ、さらなるものづくり産業の育成に取り組んでいます。

そのような神戸市において、神戸市 経済観光局工業課がリードする神戸市IoT推進ラボでは、人手不足や生産性向上の課題を抱える中小ものづくり企業に対し、IoTを活用した生産性向上の支援などを実施しています。

「日々接する中小企業から、IoTについて、『社内に詳しい人材がいない』『それで何ができるのか効果が分からない』『誰に頼めるか分からない』といった悩みを聞いてきました。そうした課題解消を支援するために、さまざまな取り組みを行っています」と神戸市 経済観光局工業課の熊木俊寛氏は述べます。

身近な企業のIoT導入・活用の取組の紹介で、気づきとやる気を喚起する

神戸市IoT推進ラボでは、神戸市と兵庫県、新産業創造研究機構(NIRO)との連携体制で、中小企業をターゲットにして、セミナーやIoTに関わる情報の学びの場としてのスクールに加えて、個別企業支援として、相談窓口の設置や、コーディネーターなど専門家派遣、最適なIoTツールの紹介などの伴走型支援を行ってきました。

さらに、IoT導入や活用のための補助金を付与し、その条件として成果報告を義務付けるようにすることで、成果の公表を促進。その結果として約50ケースの事例が集まり、中小企業のIoT活用事例集を作ることができました(補助金は令和2年度で終了)。
IoT・AI・ロボット導入活用事例集:2018年度2019年度2020年度

「これにより、後に続く新たな企業の取り組みの動機づけになるポジティブなサイクルを創出できました。やはり、事例数による説得力は大きかったと思っています」と、今回の事例創出を支援した新産業創造研究機構(NIRO)の玉垣浩氏は、今回の成果について述べています。

NIROでは多数集まったIoT事例のうち5ケースを選定し、3〜4分の動画を制作して、YouTube上で公開しました。「なるべくさまざまな状況の企業が参考にできるよう、業種や取り組みの内容に多様性が出るように意識しました」(玉垣氏)とのことです。
 

アスカカンパニー株式会社「IoTによる状態監視の活用」

化粧品や食料品容器などプラスチック成形品の製造を行うアスカカンパニー株式会社では、QCサークル活動を中心に、社員みんなで改善の活動に取り組んでいます。IoT・AIはその有効なツールだと考えて導入・活用を積極的に進め、製品検査の自動化や夜間の無人生産に取り組んでいます。

株式会社いけうち「霧発生製品の遠隔監視IoTシステムの開発」

スプレーノズルおよび霧発生装置のメーカーである株式会社いけうちは、LPWA(IoT用通信)を用いたIoTシステムを開発しました。霧発生システムに搭載して、状態(環境・稼働・警報)を遠隔で監視する仕組みです。監視情報に基づくタイムリーな対応で、被害および故障を未然に防いでいるということです。

株式会社三和製作所「工作機械のIoT稼働監視による生産性向上」

精密金属部品加工に携わる株式会社三和製作所は、立花エレテック製の稼働監視用IoTツールを導入し、工作機械のシグナルタワーの表示灯から工作機械の稼働状態のデータを収集しました。また独自の工夫として、停止要因分析のため段取・脱着作業を識別するスイッチを追加。生産状況の見える化で作業者の意識向を図り、出来高増加となりました。

太陽刷子株式会社「歯ブラシ製造現場のIoT化」

歯ブラシ・歯間ブラシのメーカーである太陽刷子株式会社は、まず1工程にIoT導入する「スモールスタート」でIoT活用に着手しました。シュナイダーエレクトリック製のIoTツールを使いPLCからデータ採取する仕組みを構築し、Excelのグラフ機能で生産状況をリアルタイムグラフィック表示。生産工程の見える化と現場改善の結果として出来高が向上しました。また、システム構築を社内人材で実施したことで、社内にIoT導入のノウハウを蓄積できました。その成果を踏まえて、IoT導入を工場全体に拡大して、さらなる生産性向上を達成。サーバーでのデータ一元管理・分析できるシステムも導入しました。

みなと観光バス株式会社「IoTによるバス安全運転支援システムの開発」

みなと観光バス株式会社は、神戸市東灘区の六甲アイランドを拠点として、貸切バス事業、路線バス事業を展開しています。自社開発のデジタルタコグラフ(運転記録システム)を開発して位置情報、車速などの情報を遠隔でモニターしてバスの運行管理に役立ててきましたが、最近では運転手の健康管理行うためにバージョンアップを行い、体調や状態(眠気に襲われていそうかなど)をカメラ映像から採取した心拍波形などから判定するカメラモジュールも開発しました。

相談窓口を開いて待っているだけでは、あまりお力になれない?

活動開始当初、「相談窓口を設けても企業からの接触が少なかった」とNIROの玉垣氏は言います。「同じような活動をしている組織は、どこも窓口を設けていらっしゃると思いますが、皆さん、同じようなことで悩んでいるのではないかと思います。たまに相談にくるような企業さんは、ある程度課題や、取り組みたいことが固まった段階にいらっしゃいます」

そのため、窓口を開けて待つだけではなく、こちらからセミナー等に参加してくださった企業さんを訪問して御用聞きをする活動が大事であるということです。「いざ企業さんを訪問し、お話をしてみると、ITを取り入れて解消したいという課題がいろいろ出てくるものです」(玉垣氏)。今はコロナ禍で、企業を訪問することがなかなかままならず、オンラインのコミュニケーションだけではなかなか事足りず、悩ましいということです。

これまで、神戸市IoT推進ラボは、日々の活動で収集する企業の情報ニーズを受けたセミナーなども企画してきましたが、活動を経ていくにつれ、その情報ニーズに変化が見られたといいます。例えば、2018年頃は大手企業のIoT取り組み紹介が興味の中心であったのが、後には中小企業の実践事例の把握に興味が変化しているとのことです。

「今回は、IoTの導入支援で、中小企業の生産性向上の部分で寄与できました。今後も引き続きIoTの導入支援を進めるとともに、その延長上で企業課題を解決できるDX(デジタルトランスフォーメーション:デジタル導入での改革)につなげることができればと考えます。」(熊木氏)
 

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