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未来を支えるスタートアップのタマゴを温めて市内へ送り出す、「加賀市イノベーションセンター」

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加賀市は、日本海沿岸からに南西の山岳部に向かって長く伸びながら広がる都市です。山代温泉、山中温泉、片山津温泉など個性的な温泉地や歴史ある北前船集落などの観光名所でも知られる同市なのですが、機械部品や電子部品製造、金属加工や樹脂加工、九谷焼や山中漆器などの伝統工芸といったものづくり産業が昔から盛んです。

加賀市では、生産年齢人口の流出、労働力不足等による地域活力の低下が喫緊の課題となっており、地域経済を好循環化し、若者が地域で仕事に就き働き続けることができる安定した雇用の創出と、新規創業などの流れをつくることが鍵となっています。

加賀市ではそうした地域課題の解消に、IoTやAI、ロボット、ビッグデータなどの先端技術を活用し、スマートシティ化の実現を目指して取り組んでいます。加賀市における先端ITによる産業振興を担う加賀市は、2016年7月に第1回「地方版IoT推進ラボ」に選定。現在、「IoT人材育成」「先進テクノロジーの導入」の2事業を柱として、IoTなど最先端の技術を活用できる人材によって市内企業の生産性や技術開発力の強化による産業が集積した活力のあるまちを目指すことを主眼に、さまざまな取り組みを実施しています。

加賀市は、アメリカ発のロボット教育プログラム「ロボレーブ」(Robo RAVE:Robots Are Very Educational)の国際大会において日本のホストタウンになっています。

「IoTに限らず、デジタルを活用した取り組みを進めることで、人口減少に耐えることができる強靭な地域を目指すために果敢に挑戦したい」と語るのは、加賀市政策戦略部スマートシティ課の寺岸良泰氏です。

加賀市の未来を支える企業のタマゴを温める仕組み

加賀市IoT推進ラボでは、事業モデルの転換や、新規マーケットの開拓を進める上で重要なものとして「IoTの利活用」を掲げ、それを促進することで市内産業の強靭化や活性化を図る取り組みを進めています。

加賀市IoT推進ラボは、このように加賀市を支える“未来を支える企業のタマゴ”を温めて、それを社会に送り出すまでの取り組みをトータルで行っています。ラボの拠点となる加賀市イノベーションセンターは、市民病院であった建物を改修した「かが交流プラザさくら」の3階にあります。子どもの学習から起業やものづくりの体験・試作まで幅広い用途で市民に活用されています。他にも、会議室やセミナールームなども備えています。

「KAGAものづくりラボ」は毎週土曜日、日曜日に一般開放しており、教育や趣味、業務利用まで、子どもから大人までの幅広い年齢層が利用しています。利用者は、材料費のみ負担するだけで、全てのものづくり設備が無料で利用できます。「令和2年度の実績で約921人が利用していますが、その数には新型コロナウイルス感染症の影響を少し受けています。平日利用は、事前相談があれば応じています」(寺岸氏)
KAGAものづくりラボ

「コンピュータクラブハウス」は世界21カ国100カ所以上で展開される子どもたちが「いつでも」「安全に」「テクノロジーに触れられる」IT教育コミュニティーであり、加賀市は日本第1号拠点です。加賀市内に住む子どもたちが放課後や休日に訪れ、プログラミングやロボット製作のほか、ドローンの操縦、3D CGや3Dプリンタを使ったものづくり、デジタル映像や音楽の製作など、先端のテクノロジーに触れて楽しんでいます。デジタル技術に詳しい大人のメンターも常駐しており、子どもたちが分からないことや疑問などをいつでも尋ねられるようになっています。こちらも無料で利用ができます。

「子どもたちの興味は、ものづくりからプログラミング、動画関係まで、本当に個人それぞれで、自分がしたいことを自由に楽しんでいます。なかには、自分でコードを書く中学生も現れてきています」と、加賀市政策戦略部スマートシティ課の國立昇平氏は述べます。
夢中になる様子

「インキュベーションルーム」は起業者向けのオフィスとして11室を備え、ITやIoT等のテクノロジーを活用して地域活性化や地域産業の高度化に寄与する事業を志す、個人または法人(株式会社、NPO法人など)が入居できる施設です。共益費・実費相当分(室電気料、ネット回線料等)のみの負担で事務室の賃料は無料であり、さらにビジネスのスタートアップから販路開拓に至るまで、中小企業診断士・行政書士の資格を持つコーディネーターからビジネス支援も無料で受けられます。もちろん、加賀市の補助金制度も活用できます。
インキュベーションルーム
 
「法人化を目指す意欲ある個人または設立3年以内の法人」「新たな事業展開を行おうとする市内の中小企業」が入居でき、ルームを卒業した後は、加賀市に拠点を構えて独り立ちしていきます。

これまで入居したスタートアップ企業の9社のうち6社が既に創業、入居企業同士のコラボレーション商品も登場しているということです。2021年度で満期を迎える企業が3社あり、そのうち1社は既に加賀市内に拠点を構えて事業をスタート、2社は来年度に向けての準備をしています。

加賀のスタートアップをたくさん増やすために

加賀市IoT推進ラボは、国内では早期にプログラミング教育を開始し、ものづくりラボの解放で子どもの学習環境を大幅進展させることに成功しており、「よい形で進捗している」と寺岸氏は述べています。

その一方で、「創業したい人の募集や企業の事業モデル改革は利害関係の調整が難しく、なかなか思うように進まない現実を実感しています」と取り組みの苦労について述べています。創業者の募集は、思い描く事業環境が実現可能かどうかや現在のライフスタイルを移行可能であるかということ、また既存事業のデジタル化は費用、運用の観点から即時転換とはいかないということがあり、難しいと感じながらも取組みを進めていると言います。

「近隣にあるインキュベーション施設とサービスが競合するため、当施設に強い関心を寄せてもらえるよう、どのようにPRや情報発信をしていくかも課題です。『CEATEC』など大型展示会の共同出展など広く取り組みを周知できるイベントも最大限に活用するようにしています」(寺岸氏)。

今後に向けては、イノベーションセンターの増設を図るため、拡張工事を検討中であるということです。現在は、まだ建物の一部分を活用している状態であり、拡張の余地があるのだそうです。「もっとたくさん入居者を増やして、加賀市内のスタートアップ振興を活性化させていきます」。(國立氏)
 
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