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恩納村を世界最高のリゾート地にするための観光DX(恩納村IoT推進協議会)

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沖縄県国頭郡恩納村は、沖縄本島の中央部にあり、西側の東シナ海に面する形で横長に伸びています。サンゴ礁の広がる美しい海岸線が自慢の国内屈指のリゾート地であり、県内で最もリゾートホテルが集積しています。

恩納村IoT推進ラボの主体である恩納村IoT推進協議会は、観光業において高付加価値サービスを構築するため、業務をデジタル化しようと、地元観光事業者と地域住民との連携しながら取り組んでいます。


沖縄旅行を効率よく楽しくする「おきなわCompass」
「恩納村だけを切り抜いての取り組みは難しく、沖縄県全体のことを考えてDXを推進しています」と話すのは、恩納村IoT推進協議会メンバーで、観光業のコンサルティング業であるOTSサービス経営研究所の山田真久氏です。

山田氏は、「代表取締役脳科学者&CEO」というユニークな肩書。もともとは理化学研究所 脳科学総合研究センター(理研BSI)で働く脳科学者であり、縁があって沖縄へ移住して観光コンサルタントに転身したそう。

恩納村IoT推進協議会メンバーで行う取り組みの1つが、「沖縄観光DX推進コンソーシアム事業」です。コンソーシアムメンバーは、沖縄ツーリスト、NTTコミュニケーションズ、okicom、そして山田氏のOTSサービス経営研究所です。コンソーシアム事業の成果の1つには、2022年7月1日から開始した観光レコメンドナビ「おきなわCompass」の実証事業があります。

観光客はアプリを無償で利用でき、自らの好みに合った沖縄旅行計画の立案(「旅のしおり」機能)とともに、旅行中に観光地や店舗の情報を最適なタイミングで受け取ることが可能になるサービスです。このアプリの中で、飛行機のチケットやレンタカー、ホテル、レストランなどの検索や予約が完結できることが大きな特色です。またアプリでは特に、恩納村のホテル情報を手厚く掲載しているとのことです。

観光事業者側も、事業者ごとのページを使って、自分たちに興味がありそうな観光客へアプローチし、お知らせ配信やクーポン発行などの営業ができるようになっています。事業者側にも特に難しい知識は必要なく、SNSの投稿感覚で簡単にページ編集ができるようになっています。

このアプリはアプリを端末にダウンロードする必要がない「Webアプリ」体になっています。そのため、Webサイトのリアルタイムなアクセス情報と利用者のGPSデータを合わせて取得できることも利点です。事業者サイトにアクセスした観光客の傾向把握やデータに基づくマーケティングの展開については、コンソーシアムから支援が受けられます。

「レンタカー利用者のプローブデータも取得できるため、我々としてはレンタカー利用データと「おきなわCompass」データを掛け合わせ、観光客の好みや来訪の傾向などを可視化して、それを地域発展につなげられるようにしていきたいと考えています」(山田氏)

なお「旅のしおり」機能については、それだけ切り出してネイティブアプリとして提供しようと開発を進めているということです。


観光客の移動も恩納村の暮らしも便利に「Maas事業」
また2022年度には「無人自動運転等のCASE対応に向けた実証・支援事業(地域新MaaS 創出推進事業)」の実証事業も実施しています。この実証事業では、観光客向けの各ホテル送迎バスと、地域の高齢者向けモビリティを統合した「地域巡回バス:恩納村ちゅらリゾート巡回バス」(有人バス)を、2022年10月22日から12月31日の間で運行しました。





実証実験を通じて、受益者を支援する自治体やホテル事業者による費用負担のあり方を検討しています。巡回バスのサービスでは、おきなわCompassを合わせて利用してもらうようにしました。

沖縄を訪れる多くの観光客がレンタカーを利用していますが、コロナ禍での観光客減少を受け、レンタカー事業者がリース契約により運用されている沖縄のレンタカー台数を大幅に縮小してしまったことで、再び戻って来つつある観光客の移動手段が激減してしまったという問題がありました。

特に、恩納村内にあるホテルや観光スポット、飲食店の間は徒歩では到底移動できないほどの距離で離れており、レンタカーがなければとても不便です。

もう1つ、観光客の「車離れ」問題もあります。今、若い人を中心に運転免許を持っていない、あるいは「身分証明書」替わりとして免許取得するペーパードライバーが増えています。また地元では高齢化が進んでおり、免許を返納する人も増えています。そうしたクルマが運転できない人たちにとって、沖縄の旅行そのものを避ける傾向があります。

そこで、リゾートホテルが立ち並ぶ恩納村内の国道58号線沿いを巡回するバスを運行しようと検討を開始したということでした。実証事業では、無料で乗ってもらう代わりに、降車時にアンケートに協力してもらうようにしました。

「今回は、利用者の8割以上に満足してもらえましたが、『本数が少ない』『時間がもったいない』といった意見も少しありました。地域住人からは『乗るチャンスがなかった』という声も」(山田氏)

少しの不満が出てしまった背景には、恩納村の全長が20kmもあり移動に時間がかかることと、60人乗りの大型バスを運行させたために狭い路地や部落に入れなかったことなどがありました。巡回バスの実証事業は来年度も実施予定であり、今度はオンデマンドの小型バン数台の運航を検討しており、複数の運行事業者に声をかけるようにして、商用化実現に向けて取り組んでいくとのことです。

日本政府としては、2025年をめどに高速道路を走行する自動車における「自動運転レベル4」を実現しようとしています。現実的には2025年までの実現は非常に厳しいだろうと言われる中ではありますが、恩納村IoT推進協議会では実証事業の商用化を実現し、少しでもレベル4実現に貢献したいということです。


利用者がいなければ事業は存続できない
これらの実証事業において、山田氏は、「単に必要なシステム開発だけをすればよいわけではなく、マーケティングが重要」と考えています。当然、利用者がいなければ事業は存続できないため、マネタイズ戦略を明確にする必要があります。

「国の戦略だと、『観光』だとすれば、商業施設のPOSデータを収集し、例えばそこから富裕層が何に価値を感じて投資をするのかを分析しようとします。それは当然なのですが、そのことを商業施設の経営者が知ったら、POSデータを渡すのを拒否したがると思います。ツールの作り手と実際の利用者との間では、そういうずれが生じることがよくあります」(山田氏)

まずは観光客が「便利だな」「面白いな」と思ってくれることを第一に考えて、利用してもらえるようにすることが大事。そのうえで、「そこからデータを取り出して、どんな人が見て、どのような活用をしているのかを分析することがマーケティングのポイント」であると山田氏は言います。

「それが分かれば、サービスに紐づけていけばよい。そうして、下から積み上げていった形でのサービスをプラットフォームにつなげていくことが大事であると思います」

また、観光DXの推進においては、「住民と観光事業者のニーズを汲んだ取り組みの推進を行うこと」「村役場、区長会、観光協会、企業、住民組織との意見交換を密にすること」が大事であると山田氏は考えているということでした。

恩納村IoT推進協議会は、今後、「恩納村そのもののブランド力を高め、世界最高のリゾート地にすること」を目指し、住民や観光事業者に、観光客には恩納村に「来てよかった!」「また来たい!」と思ってもらえる仕掛けづくりに今後も邁進していきたいということです。
 
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