「お勉強」で終わらない実践的な講座「社内IoTエキスパート育成講座(福山開催)」開催報告

IoTへの取組みが世界で注目を集めるようになって数年経ち,日本でもConnected Industriesが掲げられて国を挙げて推進する姿勢が鮮明になってきました。一方でIoTが意味する範囲が非常に幅広いため,先進的な企業はどんどん先を進んでいますが,目的やアプローチを見いだせずどうすればよいのか分からない企業も多いとききます。
 
中小企業は、人的、資金的リソースが限られており、自社でIoTの人材育成をする余裕がありません。それを補完するために,自治体は積極的に人材育成メニューを実施していますが、そのほとんどは、単発で終わっており、悪い言い方をすれば「お勉強」、「良いお話を聞いた」止まりです。
 
そのような反省を踏まえて、2018年度広島県では実践的なプログラム「社内IoTエキスパート育成講座」を実施しました。
募集サイト
 

 
 実際にIoTを導入する立場の部門におられる方を対象とし、最終的には、自社のIoT計画・戦略を立案し,プロトタイプ作成の上、経営層の前で発表します。
 
これによって、
「自社の課題を発掘でき,その課題に対するIoTを活用した戦略,計画を外部企業(IT企業やコンサルティング会社)に頼らなくてもできる人材」を育成することを企図しています。
 
講座は、座学(2回)、ワークショップ(4回)、最終発表会(1回)からなり,最終発表会の前には,1週間自由参加で,メンター常駐のプロトタイプ作成の場を設けております。
 
以上のプログラムを,広島会場,福山会場と2か所で開催しました。
 
広島会場は,201875日から927日に実施し,12社19名の方が受講されました。広島会場についての詳細は,こちらのリンク先の記事をご覧ください。
 
「社内IoTエキスパート育成講座」のご紹介(その1:第1回~第6回)
https://local-iot-lab.ipa.go.jp/article/hiroshima-pref-iot-1809101305.html
「社内IoTエキスパート育成講座」のご紹介(その2:プロトタイプ作成)
https://local-iot-lab.ipa.go.jp/article/hiroshima-pref-iot-1809210834.html
「社内IoTエキスパート育成講座」のご紹介(その3:最終発表会)
https://local-iot-lab.ipa.go.jp/article/hiroshima-pref-iot-1810041721.html
 
 
福山会場は,20181017日から201927日に実施し,9社12名の方が受講されました。
 
前置きが長くなりましたが,今回の記事は,これまでの福山開催の「社内IoTエキスパート育成講座」の模様をご紹介いたします。
 
 
第1回 (2018/10/17
座学講義 
 
初回は,株式会社ウフルIoTイノベーションセンターの八子所長,IoTNEWSの小泉氏を講師に迎え,世界をとりまくIoTの状況,なぜ今IoTが必要なのか,学びました。
初回は経営層の方の参加を必須としています。本講座は,「お勉強」の講座ではなく,社内のIoT化に直結した実践的な講座であるということを経営層の方と共有してもらい,次回以降の受講者に良いプレッシャーを与えます。
 

 
 
第2回 (2018/11/1
座学講義 
 
前回はマクロ的な話でしたが,今回はより具体的な内容に踏み込みました。
この講座は実践が目的ですので,大学やコンサルティング会社,大手IT企業ではなく,実際にIoTをビジネスの現場で導入支援されている民間企業の方々を講師に迎えました。
株式会社ウフルよりIoTのアーキテクチャの講義を受けたあと,通信については株式会社ソラコム,BIツールについてはウイングアーク1st株式会社より,ビジネスでの具体的活用方法を紹介するなかで,受講者に具体的なIoT活用方法のイメージを持ってもらいました。
 

 
 
第3回 (2019/11/14
ハンズオン
 
「センサーから取得したデータをRaspberryPiでクラウドにあげて可視化する」といったIoTの基本を、受講者自らが手を動かすことで学ぶハンズオン形式です。
IoTを知るには座学だけでは十分ではありません。実際に手を動かすことで、肌感覚で理解できます。受講者全員、エンジニアではありませんが、可視化まで実装でき,大きな自信になりました。
 

 
 
第4回 (2018/11/29
フィールドワーク&アイデアソン 
 
受講者の工場の現場を訪問し、デザイン思考に基づくフィールドワークとアイデアソンを実施しました。これは,短期間でアイデアを出して,それを練り上げる訓練になります。
午前は、工場のフィールドワークで,参加者は熱心に工場の案内役の方へ質問を投げかけ,実態把握,課題抽出に努めました。
午後は、工場内の会議室でアイデアソンを実施しました。当日ランダムに組んだチームに、各チーム1人づつ工場の方を交え、この工場の課題を解決するIoTを考え、最後は受講者全員の前で発表しました。
IoTのアイデアを考える訓練になり,短時間にもかかわらず面白いサービス、実現可能性のあるアイデアが飛び出しました。
工場内を見せていただくことを快くご承諾いただいたT株式会社様、ありがとうございました。
 

 
 
第5回 (2018/12/13),第6回 (2019/1/10
ビジネスモデル計画演習
 
自社にIoTを導入するには、IoTありきではなく、自社の課題を深掘りしたうえで、そのソリューションとしてのIoTを立案し,反対勢力や経営者を説得させなければなりません。
そのためには理論武装がとても重要ですので,ここはみっちりと時間をとりました。
新規ビジネス構築によく使われるLean CanvasValue Proposition CanvasStrategic Capability Networkといったフレームワークに自社の課題を落とし込み、IoT導入計画を考えました。
講師によれば通常1ヶ月はかかると言われる内容を2日間に凝縮した濃密な講義でした。受講者は脳をフル回転させ,終了時には脳が疲れきった様子でしたが,自社の課題,IoT導入計画を論理的に整理することができました。この計画を元に、これから27日の最終発表会に向け、プロトタイプ作りに入ります。
 

 
 
プロトタイプ作成 (2019/1/211/25 , 1/28
最終発表会に向け,福山市運営の施設「ものづくり交流館」において,6日間17時から21時までIoTのメンター常駐で開放し、受講生は連日夜遅くまでミーティング,プロトタイプを開発しました。
受講生のほとんどは企画部門の人たちで、エンジニアではありませんが、メンターの指導をもとに順調にIoT計画およびプロトタイプを作成しました。
 

 
 
最終発表会 (2019/2/7
 
約3か月の成果である「自社のIoT計画」を各社の経営層の前で15分のプレゼンテーションを行いました。
単なる「お勉強」の発表会ではなく、まるで受講生自身の会社の経営会議のような緊張感につつまれながら,受講生は経営層に対し,自社のIoT導入計画と実現性を裏付けるプロトタイプを発表しました。
 

 

 
経営層の多くは,発表内容の具体化に向け社内で検討に入るとの反応でした。IoT導入には,現場や関係各部との調整など多くのクリアすべきハードルがありますが,このように経営層自らがコミットすることで,早い実践が可能となります。近いうちにこの講座の卒業企業の中からIoTの好事例が生まれることを期待いたします。
 
 
この3ヶ月間、業務の傍ら深く濃い講習を受講し、素晴らしい発表をされた受講生の方々,本講座の参加をバックアップいただいた参加企業の経営層,上司の方々および企画・運営に尽力された株式会社ウフル様など多くの関係者の皆様方に深く御礼申し上げます。
 
 

 
 

カテゴリー Category

アーカイブ Archive

地域DX推進ラボ数

38

地方版IoT推進ラボ数

72

おすすめ記事 Recommend

人気記事 Popular

リンクバナー Link banner

リンクバナー一覧